- 2023/06/29 掲載
買収提案、再検討不可避=「物言う株主」経営参画に激震―東洋建設
海洋土木大手の東洋建設で、同社買収をもくろむ大株主が提案した候補者が取締役メンバーの過半を占め、代表権のある会長ポストも手中に収める異例の事態となった。旧経営陣が反対してきた買収提案の再検討は不可避の情勢だが、意見集約は難航しそうだ。
「東洋建設との協議に真摯(しんし)に臨む」。東洋建設株式の28%超を持つ任天堂創業家の資産運用会社「ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス(YFO)」は27日の株主総会後、さっそく買収案協議への意欲を声明で示した。
総会では、YFOが株主提案した取締役候補7人が選任。会社提案で選ばれた6人を上回り、「物言う株主」の経営参画に社内に激震が走った。
新メンバーで開いた総会後の取締役会では、旧経営陣で決めた大林東寿専務の社長昇格は認められた一方、三菱商事常務などを務めたYFO側の吉田真也氏がいきなり代表権のある会長に就任したことが28日明らかになった。「会社を押さえ付けに来ている」(関係者)と警戒感も広がった。
YFOは昨年5月、洋上風力事業強化などの企業価値向上策を掲げ、TOB(株式公開買い付け)による非上場化を東洋建設に提案。しかし、協議は決裂し、旧経営陣は「企業価値が毀損(きそん)することは明らかだ」と拒否の立場を明確にした。
YFOが取締役を送り込むのは、買収提案を受け入れる体制への転換が狙いだ。総会後は「従業員やそのご家族に多大なご不安と混乱を与えた」と関係修復に配慮する姿勢も見せる。
ただ、海洋土木は特殊性が高く、東洋建設内には「事業を詳しく分かっていない」(社員)と外様役員への不信感もある。会社側はまずは時間をかけて事業への理解を深めてもらいたい構えだが、経営陣のパワーバランスは拮抗(きっこう)しており、主導権争いが激化する懸念は拭えない。
【時事通信社】
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