- 2023/08/14 掲載
焦点:中国不動産大手の利払い不能、政府支援でも危機連鎖のリスク
[香港 9日 ロイター] - 中国の不動産開発大手、碧桂園は2250万ドル相当の社債の利払いを6日の期日までに履行できなかった。このニュースは、中国政府が早期の支援措置を打ち出さない限り、経営が限界を迎える民間不動産会社が増えていくことへの警鐘と言える。
碧桂園が昨年まで最大手の開発会社だったということもあり、業界幹部やアナリストは、ロイターの取材に対し、今回の件では規制当局による強力な支援策実行を促す可能性があると語った。
ただ、多額の債務を抱えて苦しむ中国の不動産セクターが、こうした支援ですぐに持ち直すとの声は小さい。
中国では2021年、中国恒大集団がデフォルト(債務不履行)に陥ったのを皮切りに既に幾つものデフォルトが発生。先月には有力な4社が住宅販売不振に伴う流動性のひっ迫を示唆し、市場に危機連鎖の不安が再燃した。
低コストの資金調達機会がより多く、政府支援を受ける上でも有利な立場にあるとみられてきた国有企業でも、問題は広がっている。遠洋集団は一部オフショア債の支払い延期を求め、緑地控股集団も部分償還を期限までに履行できなかったからだ。
HSBCのアナリストチームは、碧桂園の利息未払いは不動産セクターの株式や社債全体の下落を引き起こし、影響が一段と波及するのではないかとの懸念をもたらしたと指摘した。
同時に「これが住宅市場支援の政策パッケージ実行を加速させる可能性にも注意したい」と述べた。
中国共産党政治局常務委員会は7月下旬、不動産政策を適宜適切に修正していくと表明。「住宅はあくまで居住用であって投機対象ではない」とのこれまで頻繁に使用してきた言い回しを避けたことから、追加的な刺激策が登場するとの観測が強まった。
<遠い夜明け>
碧桂園は8日の声明で、住宅販売状況の悪化と借り換えの難しさ、資金調達面でのさまざな規制を受けた手元流動性の減少や周期的な流動性ひっ迫を理由として「夜明けを目にするのは難しい」と、悲観的な姿勢を示した。
一部の市場参加者からは、碧桂園が今回の利払いを猶予期間中に履行できるとの期待も出ているが、同社にはこの先にも大規模な社債償還・利払いというハードルが待ち構えている。
9月だけでも58億元(8億0472万ドル)のオンショア債償還と、4800万元相当の利払いなどが予定されている。JPモルガンによると、オフショア債に関しても5800万ドル相当の利払いが控える。
もっとも複数の業界幹部は、既に業界向けの銀行融資が絞られ、流動性も非常に引き締まっているので、碧桂園がデフォルトに陥ってもセクター全体に及ぼす影響は限られるとの見方を示した。
ただ、幹部の1人は、住宅購入者が一段と民間不動産開発会社を敬遠するようになる可能性を心配している。
また、地方政府はこれらの企業が売却した物件を完成させられるよう、新規開発のための資金調達を一段と制限するかもしれないとの懸念も示した。
ロイターは先週、一部の都市の当局が、エスクロー口座にある物件販売によって得た資金を業者が引き出すのをより制限する措置を講じたと報じた。これにより、不動産開発会社の資金繰りがさらにひっ迫するリスクが高まりつつある。
住宅販売が再び活発化することこそが、業界の事業環境改善にとって重要だ。しかし、買い手側のセンチメントは、不動産セクターと実体経済全般の先行きに対するさえない見方を反映し、過去最低水準に沈んでいる。
ショールームの客足はまばらで、8月と9月の販売も低調にとどまると予想される。
ある政策アドバイザーは「過剰供給と在庫があり、そうした在庫を消化する必要がある。人口構造が変化し、パンデミック後には人々が住宅購入に消極的な以上、それは難しい」と明かす。
モルガン・スタンレーのアナリスト、スティーブン・チャン氏は碧桂園について、消費者心理の冷え込みや、比較的人口の少ない中小都市での事業の割合が大きい点を踏まえると、政策の後押しがあっても近いうちに販売が大きく上向く公算は小さいと述べた。
JPモルガンは、政府が不動産開発会社の流動性向上策を打ち出しても、なお碧桂園がデフォルトを起こすようなら「確実に生き残れる保証はない」ことが示されると指摘。「新たな大規模デフォルトを阻止するのに、果たして政府の支援だけで十分なのだろうか、という疑問が生まれる」と付け加えた。
*記事の内容は執筆時の情報に基づいています。
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