- 2023/08/17 掲載
アングル:「円安は日本株売り」 弱気に傾く心理 海外勢の処分警戒
[東京 17日 ロイター] - 為替市場での円安の影響を巡り、市場関係者の受け止め方が変化しつつある。円安は本来なら輸出企業の利益押し上げなど前向きな面がクローズアップされるが、現在の相場環境では、資産の目減りを嫌った海外勢の一段の売り、といった需給要因での悪材料が警戒されている。
ドル建てでみた日経平均は長期トレンドを示す200日移動平均線割れ寸前まで下げており、同水準を下回れば、調整が深まるとの声も出ている。
円安は輸出企業が海外であげた利益を還流させる際の為替差益として業績押し上げが期待され、株価にはプラスとの見方が一般的だ。それが足元では「円安がネガティブに作用している」と、CLSA証券の釜井毅生エグゼキューション・サービス統括本部長は指摘する。
春先からの日本株高は海外勢が主導したが「為替をヘッジせずに日本株を買っていた投資家は多いとみられる」(釜井氏)中で、円安によって資産が目減りし、円の先安感が売りを促しやすいとみられている。
日経平均は前日、終値で75日移動平均線を下回ったが、ドル建てでは3日にすでに割り込んでいた。その後もドル/円の上昇と反対の動きで下げ足を早めている。
円安メリットが期待される輸出関連株の代表格のトヨタ自動車の株価は、このところドル/円の上昇に追随していない。
海外勢は4月から6月第1週までに日本株を7.9兆円買い越した。その後に売り越しに転じる週もあったが、4月から足元までの買い越し累計は8.4兆円と依然として高水準にある。
このうち短期筋が中心と見られる先物の買い越しは6月第1週までに2.4兆円に高まった後、調整が進んだが、それでも1.7兆円の買い越しとなっている。
<需給面以外でも>
市場ではこのほかにも、円安のネガティブな側面が意識されてきており、円安を素直に好感しにくくなっている。
輸出企業にとっても、円安は原材料や部品の輸入コスト増を促す。「交易条件の悪化が意識されかねない水準になってきた」と、東洋証券の大塚竜太ストラテジストはみている。
「表面的な為替メリット以上に、円安の副作用も意識されている」と、りそなアセットマネジメントの戸田浩司ファンドマネージャーは話す。
化学や機械、電機など最終需要が強くなかった業界では円安メリットが期待ほど出なかったと市場では受け止められた。売り上げが伸びないと円安メリットを取りにくいと再認識される中、米金利上昇の裏返しでもある円安の進行は、米景気の先行き懸念にもつながりかねないという。
ドル建ての日経平均は、200日移動平均線に接近してきている。移動平均線はその期間の投資家の平均買いコストを表しており、これを下回れば株価の値下がりがより強く意識されやすい。
17日午後には、ドル建ての200日線でいったん下げ止まるとの思惑から買い戻しが入ったとの観測もあり、下げ渋ったが、岩盤とまではみられていない。「200日線を巡る攻防の様相で、短期的な正念場といえる」と、証券ジャパンの野坂晃一調査情報部副部長は話している。
一方、日本経済はデフレから脱却して成長フェーズに入りつつあるとの期待感も根強い。「ファンダメンタルズ面を評価する投資家にすれば、いい買い場になり得る」(東洋証券の大塚氏)との声もある。
(平田紀之 編集:橋本浩)
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