- 2023/11/12 掲載
緊張下のAPEC首脳会議=世界経済の行方は、識者に聞く(2)
◇実現可能な政策発信に期待=元経済産業審議官の豊田正和氏
―アジア太平洋経済協力会議(APEC)の役割は。
現在のように地政学的に混乱している中でアジア太平洋の声(を発信する場)としてうまく使ったらいい。気候変動などの分野で実現可能な目標をつくり、政策提言する場だ。
―軍事衝突が続く中で首脳宣言を採択できるか。
国連憲章に沿って進めることと、民間人を巻き込むのは大きな問題だという点を強く打ち出すべきだ。誰が悪いのかを言い出したらまとまらない。起きている事象が問題だと確認し合い、各国・地域が解決に向けて努力することが必要だ。
パレスチナ情勢は、日本にとってエネルギー調達に響くことが問題だ。石油危機の頃よりも中東依存度が上がっている。これはアジアの国も同じで、アジア太平洋の問題として考えるべきだ。
―米国が主導する「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」は実質妥結する見通しだ。
今の地政学的な環境の中で経済安全保障に重きを置くIPEFがメッセージを出すことは非常に重要だ。関税の撤廃・引き下げなどの市場アクセスについては環太平洋連携協定(TPP)などで進めればいい。政治的に複雑な状況では、一つのツールですべてに対応することはできない。
―外務・経済閣僚による「日米経済政策協議委員会」(経済版2プラス2)も開催される。
経済安全保障問題をどう考えるか、具体的に議論できる場だ。分野を絞った上で貿易を制限し、それに対する合意をつくっていくことが重要になる。
【時事通信社】 〔写真説明〕インタビューに答える豊田正和元経済産業審議官=6日、東京都中央区
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