- 2023/11/12 掲載
緊張下のAPEC首脳会議=世界経済の行方は、識者に聞く(1)
太平洋を取り囲む21カ国・地域が参加するアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が15~17日に米サンフランシスコで開かれる。ロシアのウクライナ侵攻が長期化し、パレスチナ情勢の緊張も続く中、世界経済の後退を避けるために協調の道を探る。開催に合わせ、米国が主導する経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の交渉が予定されるほか、米中首脳会談をはじめとする2国間外交も繰り広げられる。一連の協議の行方について、経済安全保障に詳しい鈴木一人東大公共政策大学院教授とAPEC発足に関わった豊田正和元経済産業審議官、駐米大使を務めた藤崎一郎日米協会会長の3人に聞いた。
◇米中、会談自体が前進=東大公共政策大学院の鈴木一人教授
―アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開かれる。
一番の注目は、米中首脳会談だ。パレスチナ情勢やウクライナ危機についても両国間で話し合われることは重要な意味を持つ。ただ、足並みがそろうことはないだろう。
―両国の経済対立は。
輸出規制の応酬で傷つけ合い、「経済的威圧」疲れのようなものが出てきている。双方が「もうやめませんか」と言いたいはずだ。米国は協力できる分野を見定めようとするだろうが、中国の習近平国家主席がへそを曲げることもあり得るし、バイデン米大統領も1年後に大統領選を控えて妥協したと思われてはいけない。あまり強く期待するのは難しい。
まず会うこと、それだけで前進だ。けんかせずに何らかの声明を出せれば、それだけで大成功だ。
―APEC首脳会議のテーマは。
半導体を含む米国の輸出規制など、アジア太平洋で起きている内向きで保護主義的な動きが大きな話題になる。APECはもともと自由貿易を推進する枠組み。安定した経済秩序といったような原則を確認するのではないか。踏み込んだメッセージは期待できない。
―「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」をどうみる。
IPEFに熱心なのは米国だけで、他の国はお付き合い程度だ。「貿易」「サプライチェーン(供給網)」「クリーン経済」「公正な経済」の協定に表向き反対するようなものはない。ただ、みんなが欲しがるものではなく、合意できても状況の劇的な変化を生み出すとは思わない。
【時事通信社】 〔写真説明〕東大公共政策大学院の鈴木一人教授(公益財団法人国際文化会館提供)
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