- 2025/08/02 掲載
相互関税、最悪は回避=自動車、説明責任が焦点
トランプ米大統領が、日本への相互関税に関する大統領令に署名した。日本にとって最悪の事態が回避されたが、7日に相互関税が15%に上がり、自動車関税の引き下げは時間を要する。日米交渉の合意内容には曖昧さも残り、日本政府が今後、影響を受ける事業者への説明責任をどう果たすのかも焦点となる。
米国は現在、一律10%の相互関税を課している。7月には日本への関税を25%にすると通告したが、今回の大統領令署名により、税率を15%に下げて発動すると決まった。ただ、4月以降27.5%の関税が課されている自動車や自動車部品については、日米で合意した15%への引き下げ時期が決まらないままだ。
石破茂首相は7月31日、自動車業界と意見交換。業界側からは、サプライチェーン(供給網)を維持するための支援を求める声が上がった。日本自動車工業会の片山正則会長(いすゞ自動車会長)は日米合意を評価しつつも「15%は小さい数字ではない」と吐露した。
日本の自動車関連産業の就労人口は500万人超と裾野が広い。取引先中小企業の雇用を守るためにも、さらなる引き下げ交渉が求められそうだ。
対米投融資5500億ドル(約80兆円)の詳細が不明瞭なのも懸念点だ。ラトニック米商務長官は米メディアに「大統領が作りたいものには何でも日本が資金を出す」と語ったのに対し、赤沢亮正経済再生担当相は、あくまで企業主導の対米投資などを政府が支援すると説明する。
食い違いの背景には、共同文書が作られなかったことがある。赤沢氏は「激流に乗り遅れず、国益を追求することが大事だ」と文書には必ずしもこだわらずに早期合意を優先させた。環太平洋連携協定(TPP)交渉などに携わった渋谷和久関西学院大教授も「文書作成に時間をかけていたら合意できなかった」と政府の判断を支持する。
首相は、閣僚らが直接説明する会を8月に集中的に開催すると表明。ただ、詳細が確定していない部分もあり、説明責任をどこまで果たせるかは見通せない。自社への具体的な影響度合いが見えない中、事業者らは懸念を募らせている。
【時事通信社】 〔写真説明〕日米関税交渉の合意に関して、自動車業界との意見交換会で発言する石破茂首相(左端)=7月31日、東京都港区
最新ニュースのおすすめコンテンツ
PR
PR
PR