- 2025/08/04 掲載
アングル:粘る日経平均、CPI次第で「現実」見極めの段階に
[東京 4日 ロイター] - 米雇用統計の弱い結果を受けて急落した日経平均だが、節目の4万円では下げ渋り、粘り腰を見せている。ゴルディロックス(適温)相場を支える「米景気の底堅さ」に疑問符がついたものの、同時に早期利下げの思惑も強まったためだ。次の焦点は米消費者物価指数(CPI)で、予想を大きく上振れるようなら、頼みの綱となる利下げ期待も霧消しかねないと警戒されている。
<雇用統計ショック、投資家は楽観視>
週明けの東京市場では「米雇用統計ショック」との声が上がった。前週末に発表された7月雇用統計は、非農業部門雇用者数の伸びが市場の予想以上に鈍化した上、過去2カ月分の雇用者数も大幅に下方修正され、株価の主要3指数がそろって下落し、ドル/円も急落。東京市場でも投資家のリスク回避姿勢が強まった。
雇用統計は、もともと振れの大きい指標とされ、過去分が修正されることもあった。ただ今回は、修正の結果、過去3カ月間の雇用者数の伸びは月平均3万5000人にとどまることとなり、前年同期の12万3000人から大きく減少した。
4月の急落以降、堅調な米経済を前提にした米株高に日本株もつれ高していたが、その前提に疑問符がついたことで、日経平均はひとまず売りが先行した。今まで、雇用統計が強いから米経済は盤石というコンセンサスがあったが「一度立ち止まって考えなければならなくなった」と、りそなアセットマネジメントの戸田浩司ファンドマネージャーは話す。
もっとも、日経平均は朝安後に下げ渋った。個人投資家は「押し目買いに徹している」と、松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは話す。個人投資家は、株価が4万2000円台に上昇した局面では逆張りの売りに動いていた。
昨夏や今春の急落時には、短時間で株価が切り返した経緯があり「ろうばい売りが得策でないと投資家も経験から学んだ」(国内運用会社のファンドマネージャー)との指摘もある。
4日の東京市場では、大型株のTOPIXコア30がしっかり売られた一方、東証グロース250指数は小幅プラスで、投資家は楽観視している様子がうかがえると松井の窪田氏は指摘する。
<米CPIが目先の焦点に>
米国による早期利下げへの思惑も、株価の支えになっている。CMEのFedWatchによると、市場での9月米利下げの思惑は、雇用統計発表の前日に約4割だったが、発表を経て約8割に高まった。
こうした早期利下げ期待のつなぎ止めでは、12日に発表が予定される米消費者物価指数(CPI)が焦点になるとみられる。野村アセットマネジメントのチーフ・ストラテジスト、石黒英之氏は、米関税で財価格のインフレ圧力が高まる一方、サービス価格のインフレが落ち着いてきているとして「インフレ圧力は限定的」と見込む。米連邦準備理事会(FRB)は雇用最大化に軸足を置くとの見方から、9月の米利下げの確度は高まっているとみる。
一方、米CPIが市場予想を大きく上回るようなら、景気後退とインフレが同時進行するスタグフレーションへの懸念が高まり、リスク回避が強まり得る。FRBは利下げに動きにくくなり、早期利下げの思惑は後退しかねない。米経済の底堅さと早期利下げという2つの思惑の「両方を失うと(株価には)かなりきつい」(りそなAMの戸田氏)との声がある。
株価は、株価収益率(PER)と1株あたり利益(EPS)の乗数となる。日経平均のPERは過去数年、14倍─16倍のレンジとされるが、1日時点では16.5倍台とレンジの上限にある。一方、EPSは決算シーズン序盤の7月17日の2539円程度が、1日には2468円へと低下。決算の結果は株高を示唆していないとの声もある。
トランプ関税の実体経済への影響が8月あたりから出始めると警戒された中での弱い雇用統計でもあり、いよいよ影響が強まってきたとの警戒感もくすぶる。「(楽観的な見方から)現実をみる局面に入ってくるのではないか」と、松井の窪田氏は話している。
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