- 2025/08/09 掲載
「米国債の買い手」拡大=規制緩和、米銀に照準―ステーブルコインも推進
【ニューヨーク時事】米連邦準備制度理事会(FRB)など金融当局は、米金融大手を対象とした厳格な自己資本規制の緩和にかじを切る。トランプ大統領肝煎りの大型減税で国債(借金)増発が見込まれ、財政悪化が避けられない中、米国債の保有を促す狙いだ。国債を裏付けとする暗号資産(仮想通貨)「ステーブルコイン」の普及促進も組み合わせて、ウォール街で米国債を買い支える仕組みを築きたいとの政権側の思惑が透ける。
FRBが6月に公表したのが「補完的レバレッジ比率(SLR)」と呼ばれる資本規制の緩和案。国際的に重要とみなされる米金融大手を対象に計算方法を見直し、資本比率のハードルを下げる。ゴールドマン・サックスなど8社の中核的自己資本は2100億ドル(31兆円)減少する見通し。結果として金融機関に余剰資金が生まれ、それだけ投融資を増やすことができる。
ゴールドマンのソロモン最高経営責任者(CEO)は今回の規制緩和について「より効率的な金融システムを育て、米経済の成長や競争を後押しする」と歓迎。金融市場では、リーマン・ショック後の規制強化で売買が振るわなかった米国債に資金が流入するとの期待感が膨らみ、「トランプ関税」による財政悪化懸念を背景とした長期金利の上昇圧力を和らげている側面もある。
トランプ氏は米国債の売買活性化に向けてステーブルコインにも望みを懸ける。決済手段としてのステーブルコイン普及を目指す「ジーニアス法」が先月成立し、「米国を暗号資産の首都にする」と意気込む。ベセント財務長官は同法成立に伴い、米国債に対する需要が2兆ドル(約300兆円)まで大きく膨らむと期待を寄せる。
なりふり構わぬ高関税政策は米経済の信認低下を招き、リスク回避による国債離れが進む懸念がつきまとう。大和総研ニューヨークリサーチセンターの鈴木利光主任研究員は「SLR緩和とステーブルコイン普及を車の両輪とすることで、大手行の国債保有が増える可能性がある」と分析している。
【時事通信社】 〔写真説明〕「ステーブルコイン」の規制整備に関する法案に署名したトランプ米大統領=7月18日、ワシントン(AFP時事)
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