- 2025/09/08 掲載
焦点:中国株、信用買いが過去最大に 相場不安定化で警戒感高まる
[シンガポール/上海 5日 ロイター] - 中国株式市場では5日の週、信用取引融資残高が過去最大を記録した。しかし規制当局が市場の過熱を抑える措置を検討しているとの報道で急激な相場調整が起こり、投資家は信用買いに神経をとがらせるようになった。
中国の金融システムは、デフレと根強い不動産債務危機を背景に何カ月間もリスクが高まった状態にあるが、足元の株式投資家の行動によって一段と圧力が強まりかねない。
5日の週の信用取引融資残高は過去最高の2兆3000億元(3215億5000万ドル)となった。投機筋の間では、消費者ローンで借りた資金を株取引に回す動きもみられる。
中国経済は低迷し貿易、地政学面で緊張がくすぶっているにもかかわらず、こうした流動性を原動力に上海株は8月最終週に10年ぶり高値を付けた。
しかしブルームバーグが規制当局が市場の過熱を抑える措置を検討中だと伝えると、有力企業300銘柄で構成するCSI300指数は4日に2%下落した。
北京に住むプログラマーのカシエル・ジャンさん(35)は、手軽に利益を出したいと考えて20万元を借りて株を買ったが、9月初週に市場が荒れて多くの銘柄が3―5%乱高下したことに少しショックを受けた。
「高値で利益を確定していない限り、傷を負い始めれば損切りすべきかどうかと迷う」とジャンさんは語り、「夜ぐっすり眠れるように」信用買いを減らすつもりだと明かした。
信用取引が膨らむことは中国では珍しくないが、個人投資家と規制当局が懸念を募らせている様子からは、バブルのリスクが浮かび上がる。
中国証券監督管理委員会(証監会)の呉清主席は8月最終週、「長期的で理性的なバリュー投資」を強く推奨することによって「市場の良いトレンドを固めていく」と表明した。
人工知能(AI)半導体設計大手、中科寒武紀科技(カンブリコン・テクノロジーズ)は8月に株式時価総額が倍増して6880億元に達していたが、9月4日には15%の暴落となった。
証券取引所のデータによると、カンブリコンの信用取引融資残高は100億元を超え、投機筋の間で最も人気のある銘柄のひとつだ。
UOB・ケイ・ハイアン(香港)の国際営業執行ディレクター、スティーブン・ルーン氏は、記録的な信用買いによって市場が危うさを増していると指摘。「市場沈静化措置が実施されれば、信用取引を利用している投資家が真っ先に退出を迫られるだろう」と語った。
<消費者ローンを転用>
中国政府は今月、消費者ローンの金利補助を開始する一方で銀行に同ローンのリスク管理強化を促している。しかし一部の株式投資家は、同ローンを使えばもうけられることに目を付けた。
ハイテク産業で働く個人投資家のジェームス・リューさんがその一人だ。消費者ローンの金利は3%前後と、信用取引融資金利の4ないし5%より低い。「だからもちろん、最初に銀行から(消費者ローンを)借りて」株式購入に回すという。
銀行は消費者ローンを株式購入に使うことを禁じているが、リューさんは複数の口座間で資金を移動させているので見つかる可能性は低いと語った。
一方、中国民生銀行や黒河農村商業銀行など、クレジットカード・ローンを投資に不正利用することに警鐘を鳴らす銀行が増えている。
ムーディーズはリポートで、景気低迷で消費者が財布のひもを締める中、「信用力の低い消費者が引き続き積極的に資金を借りており、貸し手の資産リスクが高まっている」と指摘した。
ただ、中国の浮動株時価総額に占める信用取引の割合は現在2.3%と、ピークだった10年前の4.7%を大幅に下回っている。
また、2015年の中国株式バブルを煽ったような個人投資家の浮かれ気分や、違法な影の銀行(シャドーバンキング)借り入れの兆候は乏しい。
マッコーリー・キャピタルの中国株ストラテジー責任者、ユージーン・シャオ氏は「政府は株式市場を支えたい意思を明確に示している」とした上で、「とは言え、政策当局者は2014―15年の信用取引バブルに似たバブルと崩壊のサイクルを警戒している」ため、「過度な投機フローは抑制するだろう」と予想した。
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