- 2025/10/20 掲載
アングル:グローバル企業、中国事業の先行き悲観 国内企業が台頭
[ロンドン/パリ/アムステルダム 17日 ロイター] - ドイツの自動車メーカーのBMWから、衣料品店「ユニクロ」を擁する日本のファーストリテイリング、スウェーデンの家具大手イケアに至るまで、グローバル企業が中国事業の先行きを悲観視している。一部は利益予想を撤回し、他は新たな「正常化」を受け入れる姿勢を見せている。脆弱な経済と低迷する消費が経営陣にブランド戦略の再考を迫り、台頭する中国企業との競争を余儀なくされていることが背景にある。
貿易を巡る紛争や激しい価格競争、高まるナショナリズム、消費者のコスト意識の高まりに直面する中国市場は、トランプ米政権による輸入品の関税引き上げで既に圧迫されている多くの企業にとって大きな足かせになりつつある。
イケアのフランチャイズ企業、インター・イケアのジョン・エイブラハムソン・リング最高経営責任者(CEO)は「価格競争力をさらに高めるため、より賢い生産方法を見つける必要がある。中国市場でより関連性の高い存在となるためのすべを学ぶ必要がある」との認識を示した。
価格競争と米国の関税により、中国に進出している外国の自動車メーカーは最も深刻な打撃を受けている業種の一つだ。BMWに加えてメルセデス・ベンツ、ポルシェも、競争が激化する世界最大の自動車市場である中国での販売減少を報告した。
世界最大の加工食品企業ネスレ(スイス)は、消費者需要の喚起に一層力を入れる必要があると説明した。
世界最大の半導体製造装置メーカー、ASML(オランダ)は来年の中国需要が「大幅に」減る可能性があると警告し、中国での売上高減少を「正常化」と表現した。
中国の消費者は節約志向を強めており、割引価格を求めて中国の電子商取引(EC)大手アリババ・グループの「淘宝(タオバオ)」などのオンラインプラットフォームに殺到している。
ファーストリテイリングは約900店舗を展開する中国での売上高と利益が前年より減った一方、北米での売上高は24%増えた。
中国ブランドとの激しい競争を強いられている米ナイキは大中華圏の売上高が5四半期連続で減少した。同社は最近、米バスケットボールのレブロン・ジェームズ、ジャ・モラント両選手を中国に送り込んで消費者にアピールした。
酒類業界では、中国でのワインの主力ブランド「ペンフォールズ」の売り上げが低迷しているオーストラリアのトレジャリー・ワイン・エステーツが2026年の利益見通しを撤回した。同社は理由として飲酒習慣の変化や、大規模宴会の減少を挙げている。
フランスの酒類メーカー、ペルノ・リカールPERP.PA>は中国での売上高が27%減と急減したと発表した。
<国内企業が台頭>
グローバル企業にとって中国での課題が増える中で、自動車からコーヒー、ファッションに至るまでほぼ全ての分野でより安価な国産代替品が急速に台頭していることも打撃になっている。
2025年1―8月の中国での新車販売台数に占める中国ブランドの割合は69%と、20年の38%から大幅に上昇した。
国産代替品の代表格として米スターバックスと競合する瑞幸??(ラッキンコーヒー)、アイスクリーム「ハーゲンダッツ」を価格競争で脅かすアイスクリーム・飲料チェーンの蜜雪氷城(ミーシュエ)」、化粧品市場でグローバル企業のシェアを奪った珀莱雅化粧品(プロヤ・コスメティックス)と自然堂(チャンド)が挙げられる。
ラッキンコーヒーのカフェラテは通常9.9元(約1ドル40セント)で販売されており、これはスターバックスの価格の3分の1未満だ。
米コンサルティング会社、フロスト&サリバンによると、中国の化粧品市場での国産ブランドのシェアは25年に50.4%となり、年間で初めて外資系ブランドを上回ると予測されている。
中国のもう一つのスター企業は、「金のエルメス」と呼ばれる宝飾小売業のラオプ・ゴールドだ。25年に入ってから株価は3.14倍に膨らんだ。フロスト&サリバンによると、ラオプの顧客のうち77.3%は外国の高級ブランドのルイ・ヴィトン、エルメス、カルティエ、ブルガリ、ティファニーでも買い物をしている。
ネスレは中国市場での流通網の構築に重点を置きすぎ、消費者への対応が後手に回ったとして戦略を転換している。アンナ・マンツ最高財務責任者(CFO)は「中国市場ではこの点を修正し、流通網を強化して効率化を図ると同時に、消費者需要を構築している」と述べた。
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