- 2025/10/24 掲載
焦点:不安消えないニデック、第3者委調査が焦点 事態の深度確認できず
[東京 24日 ロイター] - 関税の未払いや不適切な会計処理など問題が噴出しているニデック。2026年3月期の業績予想を取り下げるなど、一連の問題の業績へのインパクトも測れない状況にある。東京証券取引所も動けず、不正会計の金額や期間、経営陣の関与などが明らかになる第三者委員会の調査を待つ状態が続いている。
<投資判断に必要な情報「ない状況」>
ニデックを巡っては、期末の有価証券報告書の提出に際して監査法人が異例の「意見不表明」とし、不透明感が一気に高まった。きちんとした有価証券報告書がないという現状は「投資家にとって投資判断に必要な情報が出ていない状況」(東京証券取引所上場部企画グループ調査役の山脇菜摘美氏)と、東証も懸念を示す。
発端は6月。イタリアの子会社で生産したモーターの原産国申告に誤りがあり、関税が未払いとなった可能性を認識したと公表。その後、中国のグループ企業で不適切な会計処理の可能性があったほか、ニデック本体やグループ会社の経営陣の関与・認識のもとで不適切な会計処理が行われていたことを疑わせる資料が複数見つかったとし、外部の弁護士などで構成される第三者委員会を設置した。
UBS証券アナリストの平田真悟氏は「過去においてM&Aによる売上高の急成長を志向するあまり生じたゆがみを是正し、経営基盤を強化する大きな流れの中で顕在化した事案とも解釈できる」と話す。
市場では、先行き上場廃止に至るのではないかと懸念する声もある。有価証券報告書の「虚偽記載」や「意見不表明」があった場合、直ちに上場廃止をしなければ市場の秩序を維持することが困難とされる場合には、上場廃止となる。ただ、これは、売上高の大半が虚偽などの場合に限られ、直近では9月19日に上場廃止となった創建エースや、売上高の最大9割が循環取引と指摘されたオルツなどが該当する。
上場廃止につながる可能性のある措置としては「特別注意銘柄」への指定があるが、監査法人の「意見不表明」ですぐに「特別注意銘柄」に指定されるわけではなく、内部管理体制の改善の必要性の認定が必要となる。必要な要素が自主規制法人で認定されれば、第三者委員会の報告を待たずして特別注意銘柄への指定は可能だが「第三者委員会の報告や当該会社へのヒアリングなどで明らかとなった不正の金額や期間、経営陣の関与、原因などを踏まえて自主規制法人が特別注意銘柄への指定を含めて措置が必要かを決めるのが一般的なフロー」(東証の山脇氏)という。
東証によると、特別注意銘柄に指定された企業のうち、半分程度は解除になり、半分は内部管理体制の不備やその他の上場廃止基準に抵触するなどして上場廃止に至っている。
<警戒解けぬ市場、機関投資家も動けず>
ニデックは23日、2026年3月期の業績予想を未定とし、5月に決議した自社株買いも中止した。24日の東京株式市場では、日経平均が600円程度上昇する中、一時10%安の2277円まで下落した。山和証券調査部次長の多功毅氏は「第三者委員会の調査状況を踏まえてこうした発表をするということは、会社側は業績インパクトが見えてきているのだろう。ただ、投資家はどの程度影響があるのか分からず、警戒感から売りが強まっている」と話す。
日経平均が5万円の史上最高値をうかがう中、ニデックの株価は、取引不正の疑いを公表した翌日の9月4日に2420円を付けた後は、2500円付近で低迷が続いていた。不正疑い公表直前の8月25日には3275円を付けていただけに、足元では約2カ月で1000円程度下落している状態にある。多功氏は「下がったところで、値ごろ感で買うという動きにはなっていない」とし、「この先、経営体制の刷新まで踏み切らなければいけない話なのか、将来の展望を描きにくく、特に機関投資家などは買えないだろう」と話している。
UBS証券の平田氏は「投資家との議論を踏まえると、第三者委員会による調査や関税関連の社内調査の全容が明らかになることが株価ボトムアウトには必須と言える」との見方を示している。その上で、この事案の不透明感が晴れれば、1)事業ポートフォリオ改革による利益率改善、2)データセンター・エネルギー・インフラ関連を軸とした利益成長、3)会社の質的な変化など、「評価点は豊富と考える」としている。
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