- 2025/11/14 掲載
アングル:注目浴びる米地区連銀総裁の再任手続き、トランプ氏が影響力拡大へ介入も
[ワシントン 13日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB) の独立性がトランプ政権によって脅かされている中で、5年に1度行われる12の米地区連銀総裁の再承認(任期更新)プロセスがにわかに注目を浴びている。
地区連銀総裁はローテーションで毎年5人が連邦公開市場委員会(FOMC)の投票権を持ち、金融政策運営に参画する。
通常なら再任手続きは論争を呼ぶこともなく、FRB本部理事の多数決で承認されればすんなりと完了する。全国規模の人材から選ばれる初期の審査・採用の結果に過ぎず、理事の承認はほぼ形式的だった。
しかしアトランタ地区連銀のボスティック総裁が12日、任期満了となる来年2月28日に退任すると表明したことで、様相が変わってきた。ボスティック氏の後任をトランプ大統領が直接選べるわけではないが、今回はこの本部理事の承認を得る必要がある点が事態を複雑にしている。トランプ氏は、これらの理事の間に自身の影響力を扶植する取り組みを進めているからだ。
現在のFRB理事のうち、バイデン前大統領に任命されたのが3人、トランプ氏による任命も3人で、パウエル議長はオバマ元大統領時代理事となった後、第1次トランプ政権が議長に起用し、バイデン氏が再任した。
トランプ氏は、バイデン氏が任命したクック理事については、住宅ローン申請を巡る不正疑惑を理由に解任を通告。クック氏がこれを不服として提訴し、来年1月に連邦最高裁判所が口頭弁論を開く予定だ。
来年2月に完了する地区連銀再任手続きに関して、トランプ政権がどこまで「介入」する意向かはまだ分からない。
ただ第1次トランプ政権時代に作成された法的意見に基づくと、FRB理事会には地区連銀総裁を交代させる幅広い権限があるとされ、トランプ氏が金融政策運営に対する影響力を拡大するための次の一手として地区連銀総裁の再承認手続きを利用する道につながる。
コロンビア大学法科大学院のレブ・メナンド准教授は先月、ピーターソン国際経済研究所が首都ワシントンで開催した中銀の独立性に関する討論会で、政権が間接的に地区連銀総裁の解任に成功し、後任人事にも影響を及ぼすことができれば「金融政策の策定方法に実質的な変化をもたらす可能性がある」と指摘した。
実際それが起きれば、異議を唱える訴訟が提起されて波乱の法廷闘争をもたらす公算は大きい。
それでもトランプ氏は、クック理事への異例の解雇通告を見ても分かるように、これまでも自らの影響力を限界まで広げようとする試みを避けようとはしなかった。
クック氏が起こした訴訟では、最高裁が現時点でもFRB独特の組織構造は、トランプ氏による幹部解任が認められてきた他の独立機関とは異なると認めている。
もっとも地区連銀総裁はFRB理事とは別のカテゴリーに属しており、トランプ氏が理事に自身の同調者を任命することを通じて、地区連銀総裁を「意のままに」解任できるかもしれない。
第1次トランプ政権の司法省幹部だったヘンリー・ウィテカー氏は2019年、共和党が提案したFRB改革の合憲性を分析したメモに「理事会が地区連銀総裁を随意に解任できる権限は、合衆国憲法および法律上の原則に沿っている。すなわち、任命権を持つ理事会には解任権もある」と記している。
また「地区連銀のFOMCメンバーを随意解任対象とすることは、FRB全体の独立性を守るために議会が選んだ仕組みを脅かさない。理事は引き続き任期による保護を受ける一方、その理事に従属してFOMCに参加するメンバーはそうではないかもしれない」と述べた。
LHマイヤーのアナリスト、デレク・タン氏は、今回の手続きでは現職の地区連銀総裁全員が再任されると考えているが、解任の脅威は残ると感じている。
タン氏は「結局、FRB理事は(地区連銀)総裁を解任できる。この問題が脚光を浴びているという事実自体が、FRBの独立性は安泰ではないという警戒信号だ」と説明した。
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