- 2026/04/06 掲載
マクロスコープ:中東ショック、全業種に波及 「赤字転落」相次ぐ恐れ
[東京 6日 ロイター] - 中東紛争を巡る原油高の影響が、国内のあらゆる業界に波及している。直近の情勢を反映した民間調査によると、全10業種で一斉に景況感が悪化した。コスト上昇で製造業や運輸業の不調が目立ったほか、消費者の節約志向を反映して小売業も落ち込んだ。
化学肥料が不可欠な農林水産業や、塗料を使う建設業では資材の調達難も広がっており、中東情勢の混迷が長引けば、赤字に転落する企業が相次ぐとの試算が出ている。
「想定よりも悪い数字だ。次回の4月調査から中東ショックの影響が本格化すると思っていたが、(変化が)すぐに出ている」。帝国データバンクの担当者はこう話す。同社は3月下旬にアンケートを実施し、4月3日に結果を発表。1日公表の日銀短観と違って、回答期間が直近まで及んだこともあり、中東情勢を巡る警戒感が色濃く表れた格好だ。
帝国データによると、景気DIは、原油の高騰が響き、前月比1.4ポイント減の42.9だった。全業界がそろって悪化したのは、2年6カ月ぶり。人手不足を背景とした労務費の上昇に加え、円安進行による輸入コストの増加も重なった。
業種別では、「運輸・倉庫」が前月比5.3ポイント減の38.5と、3年1カ月ぶりに30台に落ち込んだ。「製造」は1.3ポイント減の40.5と、6カ月ぶりに悪化した。ナフサなどの石油由来原料の調達難から「化学品製造」が大幅下落したほか、大手自動車メーカーが中東向けに減産した影響を受けて「輸送用機械・器具製造」も苦戦した。
同調査は全国約2万3000社を対象とし、景況感を7段階で判断してもらい、点数化して景気DI(景気動向指数)を算出している。
事業規模別では、「大企業」「中小企業」「小規模企業」が軒並み悪化した。地域別でも全国10地域すべてが下落し、とりわけ瀬戸内エリアに化学品工場が集積する「四国」の不振が顕著だった。
同社の推計によると、燃料費が昨年より3割増加した場合、営業利益は5%ほど減少し、約3%の企業が新たに赤字に転落するという。なかでも、運輸業では4社に1社が赤字転落すると見込む。
<消費意欲指数、過去10年で最低>
日本は原油備蓄量が比較的多いこともあり、現時点では、他のアジア諸国と比べて、経済に大きな混乱は生じていない。だが、モルガン・スタンレーMUFG証券はレポートで、ホルムズ海峡の封鎖が長期化し、ブレント原油価格が1バレル150ドルを超える場合、「日本経済はマイナス成長や景気後退リスクが高まる可能性が高い」と分析。
サプライチェーン(供給網)の混乱や中小企業の資金繰りの逼迫などが相まって「経済が非線形的に悪化するリスクを強く意識する必要がある」との見方を示した。
企業業績の悪化や株価の下落を警戒し、早くも消費者の節約意識が高まっている。帝国データの調査では、婦人・子供服小売から「春物の動きが悪い」、時計製造からは「消費者の生活防衛の傾向が出ている」との声が聞かれた。
日銀が6日発表した4月の地域経済報告(さくらリポート)では、「賃上げを背景に、若年層やファミリー層のレジャー施設の利用が好調」(長野県内のサービス業)といった意見があった一方で、九州地方のスーパーから「セール期間の集中度合いが強まっているほか、牛肉より安価な豚肉が選好されている」という声が寄せられている。
博報堂生活総合研究所によると、4月の「消費意欲指数」は44.8点と、過去10年間の同月で最低値に落ち込んだ。新生活や新年度が始まる4月は購買意欲が高まる時期だが、ファッションや外食など幅広いカテゴリーで、男性を中心に消費マインドが悪化している。
自由回答欄では、「今後物価高が予想されるので、購買意欲が薄れている」(50代男性)、「年金はわずかにしか増えず節約一択」(60代女性)といった記述があった。
こうした状況下、モルガン・スタンレーMUFGの山口毅日本チーフ・エコノミストらは「日銀は最近利上げに前向きな情報発信を強めているが、経済の下振れリスクが高いことから、4月利上げのハードルは高い」と指摘する。
国会では、参議院で2026年度の当初予算案を審議している最中だが、ある生保系エコノミストは「ロシアによるウクライナ侵攻があった22年と同様に、物価高対策として、政府は早期に補正予算を組むことになるだろう」と述べた。
(小川悠介 編集:橋本浩)
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