- 2020/12/28 掲載
中国の銀行、来年は資金調達で苦戦か 投資家が不良債権を懸念
中国政府は今年、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、銀行に利益を犠牲にして融資を実行するよう指示。新型コロナに伴う記録的な貸倒引当金の計上を受けて、国内銀行の今年の業績は過去数年で最悪になるとみられている。
来年は、新型コロナに伴う債務の返済猶予期間が終わる。銀行はこれまで不良債権に分類していなかった債権に対処するため、資本の増強を迫られるとみられる。
これに加え、大手・中堅行は自己資本比率を引き上げ、国内外の基準を満たす必要もある。
フィッチ・レーティングスによると、中国の銀行は1-11月に1兆2000億元(180億ドル)を調達。調達額は昨年1年間の1兆5000億元を下回っている。
国盛証券の推計によると、上場銀行26行は来年、少なくとも1兆2500億元の資本増強が必要になる可能性がある。
フィッチのディレクター(アジア太平洋金融機関担当)、Vivian Xueは「銀行業界全体の資本調達圧力は、依然として強い」とし「中国の最大手行は、今後数年間で多額の資本調達か、総損失吸収力債(TLAC債)の発行が必要になる」と述べた。
フィッチによると、国内4大銀行が金融安定理事会(FSB)の基準を満たすためには、2024年末までにTLAC債が4兆7000億元不足する。このシナリオでは、融資を含めたリスク加重資産が年8%増えると想定している。
20カ国・地域(G20)は、公的資金による銀行救済を最低限に抑えるため、世界の大手行がTLAC債を通じて資本再編リスクに備える規制を2015年に制定した。
<中小銀行>
ただ、アナリストによると、大手行よりも資金調達の必要性が高まっているのは、4000行以上にのぼる中小銀行や非上場銀行だ。
地方政府は、地元銀行の資本再編を支援するため、今年2000億元の特別債を発行したが、それでも「中小銀行の資本不足は拡大する見通し」(国盛証券)という。
大手銀行の資金調達手段には、Tier2(補完的項目)債や永久債が含まれ、中小銀行の資金調達手段には、株式の公募、戦略的な資本注入、政府主導の出資が含まれる。
選択肢は豊富にあるが、投資家の関心は薄いという。
光大証券のアナリスト、Wang Yifeng氏は「小規模銀行が投資家から高く評価されるのは難しいだろう」と指摘。
中泰証券のアナリスト、Dai Zhifeng氏によると、銀行は株価が低迷しており、銀行の新規株式公開(IPO)への反応も今一つという。
中国本土の銀行株は今年6.5%以上下落。本土市場全体は22%値上がりしている。
Dai氏によると、内モンゴル自治区の包商銀行が接収された後は、中小銀行の信用リスクに対する懸念が浮上。地方銀行が発行する資本性証券に対する信頼も揺らいでいる。
銀行預金などを通じたリテールの資金調達でも、地方銀行より大手行が有利になるとみられている。
都市商業銀行と農村商業銀行は、顧客基盤が弱いことや、規制当局が高利回り預金の取り締まりを強化していることから、預金の獲得で苦戦を強いられる見込み。
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