• 2021/01/15 掲載

アングル:米長期金利上昇で揺らぐ、ドル弱気派の自信

ロイター

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[ニューヨーク/ロンドン 13日 ロイター] - 市場ではドル安に賭ける取引が人気を集めているが、米長期金利の上昇によって雲行きが怪しくなってきた。

ドルは足元で直近の安値から1%余り反発。その裏では、新型コロナウイルスワクチンによって感染が収束に向かい、米議会を制した民主党がさらなる財政刺激策に動くとの見方から、米10年国債利回りが3月以来の高水準を記録した。

昨年ドルを数年ぶりの安値に押し下げたほとんどの要因、例えば米連邦準備理事会(FRB)の超低金利継続観測などは健在で、今のドル高は持続しないとの予想が多い。

それでも長期金利上昇がドルの魅力を高め続けるのではないかとの疑念に駆られた一部の投資家は、さらなるドル安を見込む取引をためらっている。

ニューバーガー・バーマンのマネジングディレクター兼グローバル投資適格債共同責任者サノス・バーダス氏は「昨年の大半の期間、われわれはドルに一層弱気だった。(しかし)ここからはもっと上下両方向に動く展開を想定している」と述べた。

米国とドイツの10年国債利回り差は昨年7月時点の約100ベーシスポイント(bp)から、現在は165bpまで拡大している。

アナリストの話では、不安になったドル弱気派が過去数カ月で膨らませた売り持ちを巻き戻せば、少なくとも短期的なドルの戻りがあってもおかしくない。実際、米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、通貨先物市場では先週だけで300億ドル近くが売り立てられたし、直近のバンク・オブ・アメリカ・リサーチの調査でドル売り持ちが市場で2番目に「混雑した取引」だったことも判明した。

テンパスのディーリング・トレーディング担当バイスプレジデント、ジョン・ドイル氏は「ドルに弱気であり続けることはより危険になった。長期的なドルの弱さがいささか誇張されてしまったかもしれない」と指摘する。

ドルは昨年全体で7%下落した。これによって恩恵を受けた他の主要通貨や金などを買う取引は、ドル高に転じれば痛手を受けるだろう。昨年25%上昇した金は、年初来でおよそ2%値下がりしている。

代表的な避難通貨の側面があるドルにとっては、米首都ワシントンの不穏な情勢も追い風になるかもしれない。バイデン氏の大統領就任式が行われる20日にトランプ氏支持者らの抗議行動が計画されているとの報道があり、政治混乱がエスカレートする恐れが出ているためだ。

アムンディ・パイオニア・アセット・マネジメントの通貨戦略ディレクター兼ポートフォリオマネジャー、パレシュ・ウパディアヤ氏は「米政治問題はドルを一段と強くしていると思う」と話した。

一方ドル上昇とともに、チャート上でユーロの地合いが悪化しつつある。具体的には、昨年11月初め以降下値支持線となっていた、10日移動平均と21日移動平均を割り込んだのだ。

新たなロックダウン(都市封鎖)実施で欧州全体の経済状況が厳しさを増している点も、ユーロが上がるとの主張に水を差している。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのG10FX戦略グローバル責任者アタナシオス・バムバキディス氏は「われわれはさらに大きくユーロ高が進むことについて、特にユーロ圏の景気後退が他の地域より深刻な状況から、懐疑的になっている」と説明した。

それでも米長期金利の上昇は高が知れていると考える投資家もいる。

CIBCのG10FX戦略責任者ジェレミー・ストレッチ氏は「ドルにとって利回りベースで今以上の支えを提供する水準まで米長期金利が上がると、われわれは予想していない」と言い切った。

最近のドル高が基調として定着するかどうか見定めようとする投資家の立場からすると、物価上昇率を差し引いた実質利回りが鍵を握るのではないか。

これまでのところ、米国債の実質利回りは全年限にわたってマイナス圏にとどまり、ドル保有の妙味は乏しい。アムンディ・パイオニアのウパディアヤ氏は「実質利回りが名目利回りと同じ方向に動き出せば、ドルが強含むと見込めるシグナルになるというのが私の見方だ」と述べた。

(Saqib Iqbal Ahmed記者 Ritvik Carvalho記者)

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