- 2025/12/14 掲載
日米韓豪などAI半導体・鉱物供給網の枠組み「パックス・シリカ」発足 中国に対抗
シンガポール、オランダ、英国、イスラエルも会合に参加、米国主導で対中牽制へ
パックス・シリカの名称は、ラテン語で「平和」を意味する「Pax」と、AIや半導体の基盤素材である「シリカ(二酸化ケイ素)」を組み合わせたものである。主導国となった米国は、これを単なる経済協力ではなく、「経済安全保障は国家安全保障の一部」という理念に基づく戦略的パートナーシップと位置づけている。米国と日本は発足に先立ち共同声明の前文(Preamble)に署名し、供給網の安全保障強化、依存関係の是正、信頼できる技術エコシステムの推進方針を明示した。
パックス・シリカの初回会合には、日本、韓国、オーストラリアに加えてシンガポール、オランダ、英国、イスラエル、アラブ首長国連邦(UAE)なども参加し、代表や閣僚級での協議が行われた。これらの国々はAI供給網の各段階で重要な役割を担う企業や投資家が所在することから、協力枠組みの初期段階からの参画が実現した。
協力の焦点は複数の分野に及ぶ。参加国は半導体の設計・製造・包装といった製造工程だけでなく、鉱物の採掘・精製、エネルギー供給、AIインフラストラクチャー、物流ネットワークといったサプライチェーン全体を網羅する協力の必要性を確認した。これによりAIや先端技術の競争力を支える基盤を確立し、単一の供給元や特定地域への依存を避けることでリスクを低減することが狙いである。
パックス・シリカが発足した背景には、中国がレアアースなどの重要鉱物や材料の生産・供給で世界市場に大きな影響力を持つ現状があるとの認識がある。中国はこれらの資源や技術分野でのシェアが高く、輸出管理や政策措置によって国際市場に影響を与える可能性が指摘されてきた。そのため米国や同盟国は供給網の多元化と自立性の向上を図ることが必要だとしている。また、AI技術の競争においても中国の投資と開発の勢いが増していることを踏まえ、競争力維持と安全保障上の懸念に対応する枠組みづくりが急がれていた。
公式声明では、参加国は「信頼できる供給網」と「公正な市場慣行」を維持することが不可欠だと強調した。特定国への依存度を下げることで、経済的な強制力や供給制限といったリスクに対する耐性を高めることが共有された。枠組みは単独のプロジェクトよりも長期的な戦略協力関係の構築を目指しており、今後拡大する可能性も示唆されている。
また、パックス・シリカと連動して、米国と日本はAI関連技術やインフラの共同プロジェクトに向けた旗艦案件の検討も進めると表明した。これには接続・データ基盤の強化、半導体製造設備の整備、鉱物の精製・加工能力の共同開発などが含まれている。長期的には供給網全体の強靭化を通じて、AIや先端技術分野での国際競争力を戦略的に支える体制が構築される見込みだ。
パックス・シリカは発足段階では声明や宣言形式での協力表明が中心であり、実務的なプロジェクトの具体化はこれから進められる。参加国は今後も協議を重ね、技術・資源・市場に関する共同戦略を具体化していく方針を示している。今回の枠組み発足は、AI時代の経済安全保障を巡る国際的な協力の新たな一歩と位置づけられる。
以上のように、パックス・シリカは主要同盟国・友好国が連携してAI技術の核心となる供給網の安定化を図る枠組みとして発足したものであり、国際的な技術競争と経済安全保障の文脈で注目される動きとなっている。
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