- 2021/03/19 掲載
アングル:米SPAC上場額、今年は3カ月足らずで昨年超え
IPOスクープのデータによると、SPACのようなシェルカンパニーではない事業会社によるIPO総額は年初来で295億ドルで、SPACのほうがはるかに大きい。
こうした破竹の勢いは、上場したい企業にとって、従来型IPOに代わる手段となるSPACの人気を反映している。未公開企業はSPACと合併することで、通常のIPOの上場基準ほど厳しく縛られない収益予想をひっさげて上場できる利点がある。その代わりに手数料は大概、通常のIPOより高い。
UBSグループ幹部のカルロス・アルバレス氏は「今年の初めの時点では、第1・四半期が終わる前に昨年の総額を超えると言われても信じなかっただろう。実に驚異的な現象だ。近々この勢いが目に見えて止まりそうな兆しはない」と言う。
3月16日にビルド・アクイジション・コープというSPACが実施した2億ドルのIPOによって、今年のSPACのIPO総額は昨年通年分を上回った。SPACリサーチによると昨年分も既に、それまでの過去最高額の6倍を超えていた。
SPACと未公開企業との合併額も、既に昨年1年間の額を上回っている。
現在、合併対象企業を探しているSPACは408社あり、抱えているキャッシュ総額は1311億ドル。SPACが自社規模の3―5倍の企業と合併するという経験則に基づけば、潜在的な「購買力」は6000億ドルを超える計算だ。
SPACは電気自動車(EV)や自動運転車、宇宙開発など未来志向企業の買収に注力することでも、その魅力に磨きをかけてきた。SPACは通常は、買収対象を見つけるまで2年間の猶予を投資家から与えられるが、現在は大半のSPACが数カ月以内に買収を成し遂げているのが実情だ。
バンク・オブ・アメリカ幹部のウォーレン・フィクスマー氏によると、市場に入ってくる案件に対する価格決定力が高まっているだけでなく、「合併が著しく迅速に実現しているため、投資家にとってもSPACの保有コストが大幅に下がっている」という。
<はかない利益>
しかしSPACの興隆にはリスクもつきまとう。多くのSPACは合併案件を見つけると急騰するが、あっという間に反落するSPACもある。
チャーチル・キャピタルIVの株価は先月、EV新興メーカー、ルーシッド・モーターズとの合併期待で500%超上昇した。しかし実際に合併が発表されると、EVの製造開始はまだ先なのではとの懸念が広がり、急落した。
ザ・ディファイアンス・ネクスト・ジェンが運営するSPACの上場投資信託(ETF)、SPACディライブドETFは今月、過去最高値から30%下落する場面があった。現在は過去最高値を15%下回る水準で取引されている。このETFは昨年9月に組成された。
ニューヨーク大学でSPACを研究するマイケル・オーロッジ法学助教授は「今後のSPAC価格の行方は、完全に株式市場全体の動向次第だろう」予想。「調整が起これば、SPAC市場は非常に痛い目に遭いそうだ」と語った。
(Joshua Franklin記者)
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