• 2021/03/24 掲載

焦点:大手生保、米10年金利2%も想定 外債投資再開のタイミング計る

ロイター

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植竹知子、佐野日出之

[東京 24日 ロイター] - 国内大手生保が外債投資再開のタイミングを計っている。昨年後半から売り越してきたが、米国を中心に景気回復期待から債券利回りが急上昇し、国内債との対比で魅力度が増しているためだ。一方、ロイターが聞き取り調査を行った大手4社とも、金利上昇局面が終了したとはとらえていない。米10年国債利回りが年内に2%程度まで上昇することを想定しつつの運用となりそうだ。

<米金利上昇で戦略練り直し>

第一生命保険の岡崎健次郎外国債券部長は、健全な金利上昇ならば容認する米連邦準備理事会(FRB)のスタンスやワクチン普及と経済再開のスピード感を受けて、米金利上昇のタイミングの想定を前倒しせざるを得なくなったとしたうえで、10年債利回りは早ければ4─6月にも2%に達する可能性があると話す。

その上で、外債について「金利に先高観がある限り、なかなかアロケーションを大きくシフトして買いに行くことにはならないが、低い金利で買ったものの入れ替えなどを含めて、為替や金利を見ながら、国内債とのバランスをとりつつ機動的な運用を行う」と述べた。

コロナショックで、昨年3月に史上最低の0.318%をつけた米長期金利は、その後も低水準での推移が続き、生保各社は昨年は国内債に回帰する動きを見せていた。財務省の統計によると、日本の生保は昨年7月以降、外国債券を過去最長の8カ月間連続で売り越しており、この間の売却額は合計2兆円に達する。

しかし、今年に入って米国債利回りが大半の市場関係者の予想を上回るスピードで上昇、先週には1年2か月ぶりの高水準となる1.754%をつける中、各社とも外債投資戦略を練り直し始めている。

<クレジット中心との声も>

長期金利が大幅に上昇する一方で、FRBが2023年までゼロ金利を継続すると打ち出したことで同国の短期金利は抑えられており、結果としてドルのヘッジコストが比較的低位で安定していることも、外債投資の大半に為替ヘッジをかける日本の投資家にとっては追い風となっている。

ただ、今後インフレ懸念がさらに高まれば、米国が早期に利上げを迫られる可能性もある。その場合にはヘッジコストも上昇する可能性が高いため、投資対象としては、米国債よりも利回りの高い、社債などクレジットものがメインと考える会社も多いようだ。

住友生命保険の藤村俊雄運用企画部長は「利上げが当面行われずヘッジコストが低位の環境下では、ヘッジ付き外貨建て資産の投資妙味は高まる。ヘッジ付き米国債投資の妙味も一時的には高まるものの、将来のヘッジコスト上昇リスクを視野に入れ、外貨建てクレジット資産などスプレッドの取れる資産を中心に投入を検討する」と話す。

ヘッジコストの上昇リスクを見込みつつ、大手4社の中でも米国債にやや慎重なスタンスをとるのは日本生命保険だ。

同社の執行役員財務企画部長の岡本慎一氏は「コロナ禍前の19年以前は米長期金利が2%を超えていたこと、またヘッジコストも中長期的には上昇する可能性が高いことなどに鑑みると、現在のヘッジコスト控除後の米国債は投資妙味に乏しい」と話す。その上で、「外債投資は引き続き、スプレッド収益を獲得できて長期投資の観点から妙味のある海外社債を中心に投資していく」としている。

<オープン外債も検討>

為替ヘッジをつけないオープン外債についても検討余地があるとの声が出ている。

明治安田生命保険の運用企画部運用企画グループマネジャー、北村乾一郎氏は、米国の金利上昇を受けた日米金利差拡大に伴い、ドル高に振れる可能性があると指摘する。「(投資対象の)年限は金利上昇の程度次第だが、長期・超長期の米国債についてはオープン外債も選択肢の1つ」という。

もっとも、当面はドルのヘッジコストが低位で推移すると見られることから、「年限を短めに構えながら(ある程度中短期の投資として)ヘッジ付き外債投資も可能」だとしている。

ただ、依然として為替リスクに慎重姿勢を示す向きは多い。第一生命の岡崎氏は「円高懸念は後退しているが、ボラティリティーはまだ高い。オープン外債を増やすには、もう少し様子を見る必要がある」と話している。

<円金利の上昇余地は限定的との見方>

国内金利の見通しについては、「足もとの円金利は米金利に連動して上昇しているものの、円金利の上昇余地は限定的」(日本生命)との見方で、各社ほぼ一致する。

住友生命の藤村氏が「25年の経済価値ベースの資本規制導入に向けて国内金利リスクを削減する必要があるため、国内債券については継続して超長期債へ投資していく」と話す通り、生保による投資も円金利上昇を抑制する要因となりそうだ。

(植竹知子、佐野日出之 編集:伊賀大記)

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