- 2021/04/16 掲載
堅調な経済指標でも米金利低下、持ち高調整や地政学リスク要因か
10年債利回りは15日、米小売売上高と新規失業保険申請件数が堅調な数字となったものの、1カ月ぶり低水準の1.528%を付けた。10年債利回りは4月に入り20ベーシスポイント(bp)近く低下し、2月と3月の上昇分の一部を削っている。通常、明るい経済指標は景気回復と物価上昇を後押しし、債券価格の下落(利回り上昇)につながる。
パイパー・サンドラーのマネジングディレクター、ジャスティン・ホーゲンドールン氏は「3月小売売上高が9.8%と急増したことを踏まえると、15日の国債利回りの動きは予想外だ」と述べた。
利回り低下の背景には、米債弱気派の巻き戻し、ロシアとウクライナ関係の緊迫化を受けた安全資産買い、海外投資家の旺盛な需要などがあると市場関係者は指摘する。
ナットウエスト・マーケッツのデスクストラテジーのグローバル部門トップ、ジョン・ブリッグス氏は、米経済が力強く回復するという一部投資家の期待は、年初の利回り急上昇で既に織り込まれていたと指摘。「売りがある程度一服し、買いが戻りつつある」との見方を示した。
米商品先物取引委員会(CFTC)によると、投機筋の30年物米国債先物の4月6日時点の持ち高は、ネットショート(売り越し)が縮小した。10年債先物は売り越しから買い越しに転じた。
マニュライフ・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、チャック・トメス氏は「これは、必ずしも経済データが原動力になっているわけではない。ポジショニングによるところが大きく、買い手層の変化が見込まれることを示している」と述べた。
バンク・オブ・モントリオール(BMO)の米国債券部門の共同代表スコット・キンボール氏は「米国、ロシア、中国の間の緊張高まりを受けて、過去半年で大幅高を演じた株式市場から安全な逃避先としての債券に資金がシフトしている」との見方を示した。
海外勢の需要が増えているとの見方もある。日本では3月の年度末に向けた米国債の持ち高調整が終わり、投資家が再び米国債買いに動いている可能性がある。
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