• 2021/06/18 掲載

コロナ後の金融・財政:緩和政策の転換、「前向きの好循環」再現が条件=桜井前日銀委員

ロイター

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木原麗花、和田崇彦

[東京 15日 ロイター] - 日銀前審議委員の桜井真氏はロイターとのインタビューで、日米経済が明確にコロナ前の水準に戻るには2024年ごろまでかかる可能性が高いとし、23年4月までとなっている黒田東彦総裁の任期中は少なくとも現行のイールドカーブ・コントロール(YCC)政策が継続するとの見通しを示した。緩和政策の転換には、日本経済が17―18年ごろに経験した「所得から支出への前向きの好循環」が再現されることが条件になると述べた。

<ワクチン接種の進捗に不透明感>

桜井氏は日本経済について、新型コロナウイルスワクチン接種に想定より時間がかかっていることもあり「若干回復が遅くなるリスクがある」と述べ、接種のスピードやその影響についての見極めは9、10月までかかるとの見通しを示した。米経済については、雇用の回復が鈍る一方でインフレが想定より加速していると指摘。不確実性の高さから「日米経済がはっきりとコロナ前の水準に戻るのは2024年ごろではないか」と述べた。

日本では輸入物価中心の上昇がいずれ消費者物価指数を押し上げるが、そうした形での物価上昇は「日本の企業行動が変わったり、適合的な期待形成が変化したわけではなく喜んでもいられない」との見方を示した。

<マイナス金利深掘り、条件は「リーマン級の危機」>

桜井氏は、3月に実施し自身も決定に関わった日銀の政策点検について「バランスシートを大きくすることなく、緩和環境を維持することができるようになったのはひとつの進歩」と述べた。上場投資信託(ETF)の買い入れを再開するのは「マーケットが荒れたときだけだろう」とみている。

長期金利の変動幅を明確化した後も取引が縮小する債券市場については「金利の上限をぴたっと決めてしまい、かえって動きにくくなっているのかもしれない」と指摘。日米の金利に動きが出るにはもう少し時間がかかるとし、債券市場の活性化へさらなる修正が必要かを検討するのは「まだ早すぎる」と述べた。

YCCの下、日銀は日銀当座預金の政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用している。桜井氏は、マイナス金利の副作用を軽減するために導入された三層構造などの工夫によって、現行政策は「実質ゼロ金利政策と解釈している」と述べ、現行の金利水準が「ある程度長期間、今の枠組みが継続できるぎりぎりの水準」とした。

日銀は3月の政策点検で、金融仲介機能に配慮しながら機動的にマイナス金利の深掘りを行うため「貸出促進付利制度」を導入した。桜井氏は、追加緩和手段としてのマイナス金利の深掘りは「数カ月といった一時的な措置であれば構わないが、何年も継続すると確実に金融システム問題になる」とし、「リーマン・ショックのような危機が来ない限りないだろう」と語った。

<期待成長率の変化に目配りを>

桜井氏が政策転換の条件に挙げる「所得から支出への前向きの好循環」が見られた17―18年当時は、物価が伸びない一方で経済が好調に推移する中、期待成長率が「はっきり変わっていた」と指摘。企業が設備投資の判断をする際、国内外マーケットの成長期待が大きく影響することを踏まえ「期待物価上昇率は大事だが、(日銀は)期待成長率もよく見た方がいいのではないか」と述べた。期待成長率が高い製造業と、現在は弱い対面サービス業を合算した平均値が「ある程度回復したとき、前向きの好循環が実現するかもしれない」と語った。

黒田総裁の異次元緩和は需給ギャップの改善による物価上昇と、大規模な緩和により予想インフレを押し上げることを目指しているが、予想インフレは弱い状態が続く。

正常化のプロセスでは、日銀が大量に保有しているETFのオフバランス化を「どこかで考えないといけないだろう」とし、その際は「日銀を含めステークホルダーが皆、損をしないような仕組みにすべき」との見解を示した。具体的な方策については「高齢化社会の資産運用にうまく使えるシステム」など「いくらでも知恵は出てくるだろう」と指摘した。

桜井氏はエコノミスト出身で、2016年4月から21年3月まで日銀審議委員を務めた。黒田総裁とは年齢が近いこともあり、経済理論や歴史など金融政策以外の共通の話題が多く「本音ベースで互いに語り合っていた」という。

このインタビューは14日に実施しました。

(木原麗花、和田崇彦 編集:田中志保)

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