- 2021/07/08 掲載
日銀の気候変動オペ、付利ゼロで実施も コロナ対応と差別化=関係筋
[東京 8日 ロイター] - 民間金融機関による気候変動対応の投融資を支援する日銀の新たな資金供給制度について、期間を通常のオペよりも長くしてゼロ%の固定金利で貸し付けるなどの案が検討されている。日銀内には気候変動オペへの付利に慎重な意見もあり、コロナ対応の特別オペとは別のインセンティブを付与することで、付利ゼロで実施する可能性がある。複数の関係筋が明らかにした。
日銀は15―16日の金融政策決定会合で新たなオペの骨子案を公表する予定。
日銀は3月の政策点検で「貸出促進付利制度」を創設。さまざま資金供給スキームを付利の水準に応じて3つのグループに分類した。現在は新型コロナ対応特別オペのうち、民間金融機関によるプロパー融資に相当する部分にプラス0.2%、それ以外にプラス0.1%の付利が実施されている。
日銀は新設するオペを成長基盤強化支援オペの後継と位置づけており、同オペと同様、「付利ゼロ」のカテゴリーに分類されることが有力になっている。
日銀は、民間における気候変動への対応を中央銀行の立場から支援していくことは「長い目でみたマクロ経済の安定に資する」(黒田東彦総裁)とする。しかし、新型コロナの感染拡大を受け、特別オペを通じて民間企業の資金繰り支援に万全を尽くしてきたこととは金融政策上の対応で差をつけていくのが妥当との声が出ている。黒田総裁は6月の決定会合後の記者会見で、2050年までのカーボンニュートラル実現に向けた政策対応は「基本的には政府・国会の役割だ」と指摘した。
コロナ対応オペでは、付利を実施したことで地方銀行などの利用が急増。政策効果の発揮につながった。しかし、気候変動オペで金融機関へのインセンティブを付けすぎると、環境負荷の軽減につながるとは言えない事業にまで資金が回ってしまうなどの弊害が出ることへの懸念が日銀内では出ている。
日銀は、メガバンクなどが注力する脱炭素への移行に向けた投融資も制度の対象とする可能性が高い。中央銀行として市場中立性を維持する観点から、金融機関が行う個別の融資の是非には踏み込まず、金融機関の判断に委ねる方針。日銀が融資の定義に踏み込まないため、事実上の「補助金」となる付利の実施には慎重な意見が出ている。
現行の成長基盤オペは貸付金利が年プラス0.1%で貸付期間は最長4年。金融機関へのインセンティブ付けの手法として、日銀内では1回当たりの貸付期間を1年より長くしてゼロ%の固定金利とし、複数回の借り換えを可能にする案や、成長基盤強化オペの4年より長い期間の借り入れを可能にする案も検討されている。利用額に応じて日銀当座預金のマクロ加算残高を増やす案なども出ているという。
メガバンクなどは2030年までの環境関連融資の計画を打ち出している。しかし、気候変動リスクへの対応を巡る国内外の動向は今後も変化が予想される。日銀は、比較的小規模な資金供給制度としてスタートし、必要に応じて修正することで金融機関のニーズに合った制度にしていくとみられる。
日銀は金融機関の聞き取りを進めながら骨子案を検討している。聞き取り状況や日銀内の議論により、インセンティブが変更される可能性も残されている。
(和田崇彦、木原麗花 編集:石田仁志)
関連コンテンツ
PR
PR
PR