- 2021/08/16 掲載
アングル:米株式、バリュー株に再び追い風か リフレトレード復活の予感
S&P総合500種のうち、金融やエネルギーなど景気動向に敏感なセクターが中心のバリュー株指数は先月の安値から5.5%上昇し、ハイテク株主体の情報技術株指数の上昇率を1ポイント余りアウトパフォームしている。
これは昨年終盤に米国債利回り上昇とともに始まったバリュー株急伸の背景となった、経済成長の持ち直しに賭ける「リフレーション・トレード」の復活を予感させる。今回も米国債利回りは上向いており、10年国債利回りは過去1週間でおよそ20ベーシスポイント(bp)上昇して一時1.36%を付けた。
ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズの調査ディレクター、マット・ペロン氏は「バリュー株は巻かれたバネのような状態だと思う」と述べ、少なくとも今後半年はアウトパフォームするとみている。
バリュー株の見通しが明るくなった理由は幾つか挙げられる。例えばペロン氏は、感染力の強いデルタ株によって新型コロナウイルスの感染者は増えている点が波乱要素として残るものの、欧州と米国の一部では感染ペース鈍化の兆しがあり、昨年のようなロックダウンは当面必要ないのではないかと解説する。
米国の成長率が第2・四半期にピークを付けてもなお、力強さを維持しそうなことも重要な要素だ。オックスフォード・エコノミクスによると、今年と来年の米国内総生産(GDP)はそれぞれ6.1%増、4.8%増と過去10年間の成長率を上回る見込み。
ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティテュートのシニア・グローバル市場ストラテジスト、サミア・サマナ氏は「われわれはこんな高い成長率をしばらく目にしてこなかった。だからこそ、成長率のピークが過ぎてもバリュー株がアウトパフォームし続けると考えられる」と指摘した。
JPモルガンのテクニカル・ストラテジストチームは、S&Pのバリュー株指数がチャート上の節目を上に抜ける態勢が整ったように見えると分析。トゥルーイスト・アドバイザリー・サービシズは11日、引き続き堅調な経済情勢が見込まれることと、企業全般に比べて軟調なハイテク株の収益トレンドを踏まえると、バリュー株が向こう12カ月でさらに上振れする余地があると予想している。
今週は、米7月小売売上高とウォルマートやターゲットなどが発表する業績が、消費動向がしっかりしていることを改めて裏付けてくれてもおかしくない。
一方投資家は、米国債利回りからも目が離せない。利回り上昇はしばしば景気に対する明るい見方の表れとみなされ、バリュー株の押し上げ材料になり得るからだ。特にバリュー株で大きな比重を占める銀行にとっては、利益率改善につながるという面でプラスに働く。
ただコロナ禍が依然として経済見通しに脅威を与えている中で、昨年のほとんどの時期に堅調だった大型ハイテク株やその他成長株に投資家の資金が戻る展開もあり得る。13日に発表されたミシガン大の8月消費者信頼感指数は10年ぶりの低水準に沈み、利回りを圧迫した。
また2007─09年の金融危機以降の10年間、成長株が株式市場の主役となる場面が大半で、バリュー株は低迷していた点から、多くの投資家は成長株のポジションを過度に圧縮するのをためらうかもしれない。
ジョン・ハンコック・インベストメント・マネジメントの共同チーフ投資ストラテジスト、マシュー・ミスキン氏は、成長株とバリュー株という市場の2大勢力の間では何度も優劣が入れ替わる壮大な攻防が繰り広げられていると説明した。
(Lewis Krauskopf記者)
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