- 2021/08/18 掲載
アングル:東証マザーズ指数、大台割れ後に反発 底打ち判断は尚早か
[東京 18日 ロイター] - 東証マザーズ総合が18日、1000ポイントを割り込み、約1年ぶりの安値を付けた。7月以降の下落で損失が膨らんだ個人投資家が投げ売りを加速したためとみられている。大台割れ後に買い戻しが入り反発したが、ポジション整理は終わっておらず、底打ちとみるには時期尚早との見方も出ている。
<売りが売りを呼ぶ展開>
松井証券によると、同社内のマザーズ信用買い評価損益率は17日時点でマイナス27.0%。信用評価損益率は、信用取引をする投資家がどれほど含み損益を抱えているかを示す。東証1部などの銘柄を含めた評価損益率がマイナス20%を下回ると追加保証金(追い証)が発生する水準となり、投げが出やすいとみられている。
足元で東証1部を含む全体の評価損益率はマイナス11.2%と、まだ余裕があるようにみえるが、松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは、マザーズを中心に取引する投資家には厳しい状況だと指摘。「昨日の相場急落では追い証回避の売りも一部で出た」と話す。
マザーズ指数は昨年10月に高値をつけた後、下落基調に入った。4月以降は米連邦準備理事会(FRB)のテーパリングへの思惑から海外勢がグロース株から資金を引き上げ始めた一方、個人投資家の買いが支える構図となった。それが足元では7月以降、一本調子で下げてきた。証券ジャパン投資情報部部長の大谷正之氏は「下げ基調の中で含み損が膨らみ、(保有株を)持ちきれない人が多いのではないか」との見方を示す。
新規株式公開(IPO)銘柄がさえないことも、マザーズを含む新興株市場のムードを暗くしている。年初からのIPO銘柄62銘柄中、初値から17日の終値との比較で、上昇したのは6銘柄のみ。50%以上の値下がりは12銘柄に上る。
IPO銘柄は値動きが軽く、個人投資家からの人気も高い。その株価下落で含み損が膨らみ、ロスカット(損切り)の動きが広がったとの指摘もある。「売りが売りを呼んだ」(国内証券)ことで、マザーズ指数の下げが加速したとみられている。
<リバウンド基調に入るかは予断許さず>
マザーズ指数は、1000ポイントの大台割れ後に切り返し、29.02ポイント(2.88%)上昇の1038.41ポイントで18日の取引を終えた。「短期筋が売られ過ぎとみて買い戻しを入れたようだ」(国内運用会社)という。
8月第1週の投資主体別売買動向では、マザーズは個人がやや売りに傾いた。「もう少し売りが出て、売り越しから買い越しに転じるようなら、ある程度は売りが一巡したとのサインになり得る」と、東海東京調査センターの仙石誠シニアエクイティマーケットアナリストは指摘する。
ただ、このままリバウンド基調に入るかは、まだ予断を許さない。マザーズに多いグロース(成長)株は景気減速の局面で相対的に強さが意識されるが、足元の景気はコロナ禍からの正常化に向かう局面にある。海外勢がテーパリング観測を背景に売る環境は変わらない上、200日移動平均線は7月を天井に下向きになった。
コロナ禍で下げた昨年3月の560付近から、昨年10月の1350付近までの半値押しは950付近。証券ジャパンの大谷氏は、個人投資家のポジション調整はまだ続く可能性があるとしたうえで「半値押しまで行けば、ひとまずリバウンドがあるかもしれない」との見方を示す。
足元では、個人の短期資金は海運株など東証1部の値動きが軽く商いの多い銘柄群に向かった。18日は日本郵船などが利益確定売りに押されたことで、大台割れ後のマザーズに資金が戻り、持ち直しにつながったとの見方もある。こうした動きが続くかどうかも、今後のポイントになりそうだ。
(平田紀之 編集:伊賀大記)
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