- 2021/09/13 掲載
アングル:FRB当局者の私的金融取引問題に批判、倫理規定改定の声も
FRBが米国の労働者を十分に重視していないと批判してきた「センター・フォー・ポピュラー・デモクラシー」の担当幹部ベンジャミン・ダルチン氏は「問題なのは我が国の金融政策を決める立場の連銀総裁に、大企業との個人的な利益相反が生じるのが明らかなことだ」と指摘した。
きっかけは米紙ウォール・ストリート・ジャーナルやブルームバーグの報道。これを受けてカプラン氏とローゼングレン氏は金融資産を開示し、取引はFRBの倫理規定を順守しているとの声明も9日にそれぞれ出した。今後は取引を変えることで利益相反に見えかねない状況を改善するとし、9月末までに個別株はすべて売却し、現金ないしパッシブ運用のインデックス投信に乗り換えるとした。総裁任期中はこうした取引口座でこれ以上の売買はしないとも表明した。
開示によると、カプラン氏は昨年に合計で少なくとも1800万ドルの個別株を売買。大半はアップルやアマゾンといったハイテク株と、マラソン・ペトロリアムといったエネルギー株だった。ダラス地区連銀の広報担当者は、取引はすべて連銀の法務責任者に報告されていたとしている。
ローゼングレン氏はブルームバーグ報道の通り、不動産投資信託(REIT)4本を保有するなどしていた。同氏はこれまで、商用不動産部門の過大な価値上昇のリスクに公に懸念を表明していた。同氏は声明で「FRBの倫理指針を守っていることを強く示すため、こうした資産を売却することに決めた」とした。
<監督の強化>
FRB当局者には現状で、連邦公開市場委員会(FOMC)前後のいわゆる「ブラックアウト期間」の取引禁止や、銀行株ないし金融部門特化型の投信の保有禁止、証券購入後30日間の売却禁止などの特定の制約がある。
ただ、こうした行動規範は実はもっと幅広い規制の文言も含んでいる。「職員は実際上だけなく見掛け上の利益相反にもなりかねない状況は、何であろうと避けるべきだ」などだ。市場を動かす情報にアクセスできる者は「FRBの討議や決定に関わる内部情報に基づいた動きに見えかねないタイミングでは、金融取引は何であれ避けるべきだ」というのもある。
総裁2人の昨年についての開示は、それまでの何年かと大きく違うようには見えない。しかし、FRBにとって昨年は特別な年だった。
FRBの迅速な行動は金融市場の大規模な破綻を防ぐのに役立ったとして称賛された。FRB当局者もこれが経済への打撃を最小限に食い止めるのを助けたと自賛している。しかし、FRBの行動が資産価格上昇には役立ったが、小規模な事業者や一般の家計を支えるには不十分だとの批判も出ている。
一部のFEDウオッチャーは、金融取引に関わる倫理規定を改定すべきときかもしれないと主張する。
ブルッキングス研究所のアーロン・クライン上級研究員は「今回の出来事は地区連銀総裁への監督が破綻していることをよく示している」と指摘。「これがルールの執行の失敗によるものなのか、ルールそのものの不備によるものなのか、どちらともつかない」とも述べた。
FRBの金融規制への長年の批判では第一人者のウォーレン上院議員は、FRB当局者にはそもそも金融取引を認めるべきではないとの立場だ。同氏は10日のツイッターに「私はこれまでも言ってきたし、もう一度言う。議員や上級政府職員には取引や株保有は認められるべきではないということだ」と投稿した。
(Jonnelle Marte記者、Howard Schneider記者、Ann Saphir記者)
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