- 2021/09/22 掲載
アングル:グッチのバッグやダイソン家電 中国恒大の理財商品、派手に販促
その多くは今、投資資金が返ってこないのではないかと恐れている。同社が資金難に陥って一部投資家への債務返済を中止し、世界中に警報を響かせたからだ。
恒大集団は18日から、現金に代わって割引されたアパートやオフィス、店舗、駐車場での返済を始めたが、一部投資家は受け入れを拒否し、同社オフィスに詰めかけて抗議している。
「エレベーターで広告を見て買った。恒大集団は米誌フォーチュンの「グローバル500」に載っている企業だから信頼したのだ」と語るのは、同社の不動産を所有する広東省のドゥーさんだ。恒大集団は同省に本拠を構える。
利回りが7%を超える同社の理財商品に昨年65万元(10万0533ドル)をつぎ込んだドゥーさんは、「汗水垂らして稼いだ金を返さない恒大集団は道義に反する」と憤った。
恒大集団傘下のエバーグランデ・ウェルスは2016年、個人間で資金を融通する「ピア・ツー・ピア(P2P)」のプラットフォームとして発足し、当初はその収益を不動産プロジェクトに充てていた。エバーグランデ・ウェルスの営業担当者によると、過去5年間に恒大集団の従業員、その家族や友人、同社の不動産所有者を含む8万人以上の人々が同社の理財商品を買い、その総額は1000億元を超えた。現在の残高は約400億元だという。
中国で祝日にあたる21日、恒大集団にコメントを求めたが返答はなかった。
3000億ドル余りの負債を抱えた恒大集団の流動性危機は今週、世界中の市場を揺るがした。同社は理財商品の投資家に返済を行うと表明している。
<クリスマス商戦>
中国政府が数年前から経済全体の債務を圧縮する取り組みを強めた結果、企業は資金手当てのために簿外商品に手を出さざるを得なくなった。
政府は昨年、不動産開発会社の債務上限をさらに厳格化。恒大集団など借金を抱えた業者は資金繰りのために新たな資金源を探す必要に迫られ、従業員やサプライヤー、顧客にコマーシャルペーパー(CP)や投資信託、理財商品を売って現金を入手する道に走った。
2019年、規制当局の取り締まりによってP2Pセクターが崩壊すると、エバーグランデ・ウェルスは個人向けに理財商品を売り始めた。前出の営業担当者と、理財商品を購入した恒大集団の従業員が明らかにした。
投資家を引きつけるため、この営業担当者は昨年のクリスマス商戦で、300万元以上の理財商品を購入した人全員にダイソンの空気清浄器やグッチのハンドバッグといったプレゼントを提供した。
営業担当者が見せてくれた小冊子では、理財商品は「着実なリターンを求める保守的な投資家」にぴったりの固定利付き商品、と位置付けられている。
<事実上、恒大の商品>
青島市のある建設会社は昨年11月、2種類の金融商品を販売した。1つは利回りが7%、もう1つは7.8―9.5%で、それぞれ1000万元と2000万元を調達する狙い。目論見書には、資金が建設会社の運転資金に充当されると記されていた。
目論見書によると、返済資金は発行体の利益で賄うか、もしくはエバーグランデ・ウェルスを運営する恒大集団の子会社が出すことになっている。発行体が返済できない場合でも、この子会社が元本と利息をカバーすると約束している。
前出の営業担当者の話では、青島市のこの会社は恒大集団のプロジェクトに関わっており、投資家への返済には同社からの支払いを充てる。つまり「事実上、恒大集団の商品だ」。
広東省の理財商品投資家らは、さまざまな政府機関に出した嘆願書で、恒大集団が自社プロジェクトに回すべき資金を不適切に利用し、リスクを十分に開示しなかったと訴えた。
恒大集団の許家印主席が2019年の中国建国70周年式典で堂々と座る姿に惑わされた、とも指摘。嘆願書には「投資家は共産党と政府への愛と信頼から恒大集団を信じ、恒大集団の理財商品を買った」と記されている。
(Zhang Yan記者、Tony Munroe記者)
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