- 2021/09/24 掲載
インフレ警戒に軸足=金融政策、正常化視野―米FRB
【ワシントン時事】米連邦準備制度理事会(FRB)は21、22両日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で、量的緩和策の縮小を11月にも決定することを示唆するとともに、事実上のゼロ金利の解除が見込まれる時期を2022年へ1年前倒しした。新型コロナウイルス危機で打撃を受けた経済と雇用への支援から、インフレ警戒へと軸足は「大きくシフト」(欧州銀エコノミスト)し、金融政策の正常化が視野に入った。
「雇用面の基準はほぼ満たした」。パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で、コロナ危機対策で導入した大規模緩和策の縮小に着手しても問題ないとの見解を表明。緩和縮小を「来年中ごろに完了する」と明言した。
8月の米雇用統計では、景気動向を占う非農業部門の就業者数が前月比約23万人増にとどまった。ただ、直近3カ月の平均では月75万人増と好調。パウエル氏は「労働需要は非常に強い」と述べ、今後の雇用回復に自信を示した。
市場関係者が驚いたのは、FOMC参加者の政策金利予想だ。22年に引き上げを開始し、23年に3回、24年にも3回の追加利上げを行うというシナリオで、「少し積極的過ぎる」(米銀エコノミスト)という声が上がった。
こうした強気の背景には、FRB目標の2%を大きく上回って推移するインフレの高止まりがある。FOMC参加者の物価上昇率予想は21年が4.2%と、6月時点の3.4%から大幅に引き上げられた。パウエル氏は、物価高騰の一因となっている供給面での障害などが「予想より長引く可能性がある」と警戒する。
もっとも、半導体などの供給不足解消には生産体制の見直しが必要で、金融政策だけで対処できるものではない。米有力シンクタンク、ピーターソン国際経済研究所のポーゼン所長は「供給ショックに拙速な金融引き締めで対応してはならない」とFRBを戒めた。
パウエル氏も、量的緩和の縮小によって「利上げ時期に関するシグナル」を発信する意図はないと強調。性急な市場の反応をけん制しながら、金融政策の正常化に向けて難しいかじ取りを続ける。
【時事通信社】 〔写真説明〕米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長=7月、ワシントン(EPA時事)
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