- 2021/11/22 掲載
アングル:米小型株に上昇の好機か 割安感と米成長期待で
EPFRのデータによると、月初からの米小型株ファンドへの資金流入は約24億ドルと、既に月間として3月以来の最高を記録した。この結果、S&P600種小型株指数は10月末から11月半ばにかけて8%上昇し、大型株で構成されるS&P500種指数の2倍の上昇率となった。より幅広い小型株指数であるラッセル2000はこの間、約7%上昇した。
新型コロナウイルス感染再燃への懸念から、これらの小型株指数は15日の週にやや伸び悩んだ。
小型株は今年初めの数カ月間に上昇していた。米経済再開により、中小企業の方がより大きな恩恵を受けるとの見方が背景にあった。しかしその後数カ月間は、新型コロナのデルタ変異株拡大で景気回復が腰折れするとの懸念から、小型株は失速。代わりにIT(情報技術)株が市場の主導権を握った。
年初からの上昇率は、S&P500が25%なのに対し、ラッセル2000は19%となっている。
しかしここに来て大型株に割高感が出てきた上、来年の米経済は潜在成長率を上回る伸びを示すと予想されているため、一部の投資家は小型株に安値拾いの好機が訪れたとみている。
BofAグローバル・リサーチによると、大型株指数ラッセル1000との比較でみたラッセル2000の予想株価収益率(PER)は最近、長期平均を24%下回っている。株価純資産倍率(PBR)や株価売上高倍率(PSR)などの指標でも、小型株は記録的な割安水準で推移している。
ジェイコブ・アセット・マネジメントのライアン・ジェイコブ最高投資責任者は「小型株の方が相対的に見てずっと魅力的だ」と述べた。
RBCのストラテジストチームは、来年の米経済成長率が4%と、長期平均の2.5%を大幅に上回ると予想。小型株は国内経済が成長している時に「もってこいの投資」だと言う。
BofAグローバル・リサーチのアナリストチームは、大型株と小型株のバリュエーション格差を踏まえると、ラッセル2000は今後10年間で年率1桁台後半のリターンをもたらす半面、S&P500のリターンはわずかにマイナスになる見通しだとしている。
巨大IT株からの分散化を探る投資家は、小型株の見通し改善に胸をなでおろしている。過去10年はほとんど巨大IT株が市場を主導。S&P500は現在、上位5社だけで時価総額の23%以上を占めている状態だ。
パトナム・スモール・キャップ・バリュー・ファンドのポートフォリオマネジャー、マイク・ペトロ氏は「妥当なリターンを得るためにFAANGに投資しなくてもよくなった」と言う。FAANGはアップルやアマゾンなど巨大IT企業5社の俗称。「忘れ去られた小型株を買って、妥当な名目リターンを得ることが可能になった」とペトロ氏は語った。
ただ、過去10年間に総じて出遅れていた小型株については、警戒を解けない投資家もいる。この間のラッセル2000の上昇率は230%、S&P500は285%だった。
米国に新型コロナ感染の新たな波が押し寄せる兆しが出れば、投資家は景気に敏感な株からIT企業へと、再び移動するかもしれない。
もっとも、バイデン政権が支持する税制改革が法制化されれば、小型株は一種の逃避先になるとの見方もある。筆頭は、利益10億ドル超の企業を対象とした15%の最低法人税率案だ。
ネッド・デービス・リサーチのアナリストチームは、この税制改革が実施されれば「大型株よりも小型株への影響の方が小さくなるかもしれない」と述べた。
(Lewis Krauskopf記者)
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