- 2021/11/24 掲載
アングル:自動車ショーは死なず、コロナで規模縮小も「リアル」の魅力
2019年のロサンゼルス(LA)自動車ショーは開幕から2日間にさまざまなイベントが開かれた。新モデルが次々とお披露目され、記者会見が怒涛のように続き、新モデルを見ようと数十万人が来場した。
2021年に時間を早送りしよう。新型コロナウイルスのパンデミック勃発以来初の米主要自動車ショーとなった今年のLA自動車ショーは17日に開幕。しかし報道機関向けのイベントが行われたのは1日だけ。一部のメーカーはショーへの参加すら見送った。
今年のLA自動車ショーでは、消費者がインターネット経由で自動車を購入する動きが広まり、コロナ禍の影響でメーカーのオンライン化が加速している様子が浮き彫りになった。とは言え、今でもリアルな世界の自動車ショーに心ひかれる人は多い。
LA自動車ショーは19日から10日間の日程で一般公開が始まった。展示場の扉が開くのを待つ人は少なく、施設内は来場者がまばらだ。
それでも米新興電気自動車(EV)メーカー、フィスカーのスポーツタイプ多目的車(SUV)「オーシャン」を見ようとデンマークからやって来たピーター・ボルクさん(52)は「iPadで見るばかりじゃなくて、自分の目で見てみたい」と話した。
ボルクさんは、来年末に納車が始まるオーシャンを購入するために年金をすべてつぎ込んだ。「写真で見るよりもサイズが大きい」と言う。
ロサンゼルスで建設管理の仕事しているダスティン・ホーグさん(47)は、「実物の車を実際に見て、触って、感じるのが一番だ」と話した。
LA自動車ショーの消費者マーケティング責任者、デービッド・フォーティン氏によると、オンライン予約は19年の水準から出遅れているが「十分に好調で、素晴らしい年になると確信している」と言う。
一方、ホンダと独BMWはそれぞれ、先行して開かれた別のイベントを優先し、LA自動車ショーには参加しなかった。ホンダは先にロサンゼルスで開いたライブストリーミングイベントで、同社を代表するブランドとして復活させた「インテグラ」のプロトタイプ(試作車)を発表した。
ホンダのデーブ・ガードナー執行副社長はズームで行ったロイターのインタビューで「あれは他社が参加しない、自社のみのイベントだった。自動車ショーの記者会見のように、注目を集めるために競争する必要がないことが分かった」と述べた。
韓国の起亜自動車も同じ見解だ。起亜デザインセンターの責任者、カリム・ハビブ氏はLA自動車ショーへの来場の傍ら行ったインタビューで、「コロナ禍で、これまでと違ったやり方で仕事ができることが分かった。今後も自動車ショーは開かれるだろうが、違う形のプレゼンテーションも行われるだろう」と述べた。
起亜と親会社の現代自動車はLA自動車ショーで電動SUVのコンセプトカーを発表した数少ないメーカーのひとつで、ソウルの本社からロサンゼルスに最高経営責任者(CEO)など幹部役員を会場に送り込んだ。
センター・フォー・オートモーティブ・リサーチの技術ディレクター、ブレット・スミス氏は「かつて自動車ショーはメディアから大々的に取り上げられ、メーカーから非常に人気が高かった。しかし消費者がソーシャルメディアなどさまざまな手段でメディアにアクセスするようになり、状況は変わった」と解説した上で「新型コロナが最後の一撃になったのではないか」と付け加えた。
もっとも、中小メーカーはこうした変化を前向きに捉えている。
フィスカーのヘンリク・フィスカーCEOは「我々への注目度が高まる」と主張。同社の「オーシャン」は実物を見ると「最高のスポーツカー」だと胸を張る。「ただ座ってコンピューターの映像や写真を見ているだけでは楽しくない。本物が見たいんだ」と話した。
(Hyunjoo Jin記者)
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