• 2022/01/16 掲載

アングル:中国は金融緩和加速、米利上げによる資金流出にも配慮

ロイター

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[北京 12日 ロイター] - 中国人民銀行(中央銀行)は、減速が続く経済成長を支えるため一段の緩和措置を打ち出そうとしている。ただ大幅な利下げよりも、実体経済にもっと潤沢に資金を流し込む方式を選ぶ公算が大きい。政策決定の内幕を知る関係者やエコノミストは、こうした見方を示した。

経済活動がさらに鈍化する場合、多少の利下げは選択肢として残ってもおかしくないとの声が一部アナリストから聞かれるが、中国の政策担当者は米連邦準備理事会(FRB)が近く利上げを開始するとの観測が資金流出につながることを心配するだろう。

中国指導部は、経済てこ入れの強化を約束している。背景には、不動産市場の落ち込みが投資の足を引っ張り、新型コロナウイルスの感染防止対策として実施している厳しい規制措置が消費を抑制しているという事情がある。足元では新変異株オミクロン株の急速な拡大が新たな脅威となり、天津市で市民1400万人を対象にした大規模検査が行われるなど全土で規制がさらに厳格化。そのため何人かのエコノミストは、中国の今年の成長率予想を下方修正した。

こうした中、人民銀行の元金融政策委員で影響力の大きいエコノミストの余永定氏はロイターに「われわれは緩めの金融政策を必要としている。どの程度緩和するかは経済情勢次第だが、政策の方向性は明確だ」と語った。

内部関係者やエコノミストの見立てでは、人民銀行は数カ月中に銀行の準備率(RRR)をさらに引き下げ、銀行融資支援策や中期貸出ファシリティー(MLF)などを通じた量的緩和に動きそうだ。中小企業向けの支援拡大も見込まれる。

人民銀行は昨年12月15日にRRRを50ベーシスポイント(bp)引き下げ、同20日には最優遇貸出金利の指標であるローンプライムレート(LPR)の1年物を5bp下げている。

Zhixin Investmentのチーフエコノミスト、リャン・ピン氏は年内に1─2回のRRR引き下げがあると想定。中国政策科学研究会の経済政策委員会副ディレクター、シュー・ホンカイ氏は、もっと急速な引き下げを予想する。

内部関係者の1人は「経済の下押し圧力が比較的大きい以上、われわれには緩和政策が不可欠なのは間違いない」と認めた。

UBSのチーフ中国エコノミスト、タオ・ワン氏は11日記者団に、次のRRR引き下げは3月か4月と述べた一方、LPRは据え置かれるとの見方を示した。複数のエコノミストは、今の物価上昇を考えると実質金利は既に低く、LPRの下げ余地は限られると説明している。現在の1年物LPRは3.8%。

人民銀行は、中国の経済情勢に沿って政策運営を進めていく方針を表明している。とはいえ、今後予想されるFRBの利上げが中国と米国の金利差を縮め、中国からの資金流出を促して人民元を圧迫する恐れがある、というのがエコノミストの考えだ。

幾つかの米大手銀行は、FRBが3月に利上げを開始し、年内に4回実施するというよりタカ派的な政策運営を想定している。

もっとも中国は貿易収支がしっかりとした黒字基調、資本規制も厳格なので、トルコなど他の新興国で起きたような急激な資金流出は避けられるとの指摘が出ている。余永定氏は「(FRBの利上げは)われわれの金融政策にある程度の制約を生み出すとしても、われわれは政策の独立性を維持できる。つまりわれわれが利下げや緩和を望めば、実行可能ということだ」と強調した。

肝心の中国経済はどうかと言えば、BofAグローバル・リサーチのリポートによると17日に公表される昨年第4・四半期国内総生産(GDP)が前年比3.1%増と、第3・四半期の4.9%増を下回る公算が大きい。

ゴールドマン・サックスは、最新の新型コロナウイルス感染状況を踏まえ、中国の今年の成長率予想を4.8%から4.3%に下方修正し、第1・四半期中にRRRの50bp引き下げ、上半期中に1年物LPRの10bp引き下げがあると見込んだ。

<政治問題>

中国の政策担当者が昨年、不動産市場の規制と債務リスクの抑え込みに注力した結果、景気の減速に拍車を掛けてしまった。それでも彼らは、今年秋に重要な共産党大会が控えているため、失業増加を招きかねないさらなる景気の急減速は何としても避けようとしている。

中国共産党中央財経委員会の韓文秀副主任は先週、週刊誌「瞭望」への寄稿で「全ての地域と省庁は経済を安定させる責任を負うべきだ。それは経済的な問題であるとともに、政治問題でもある」と述べ、あらゆる関係部門は経済安定に資する政策を積極的に導入しつつ、経済に悪影響がある政策は慎重に進めなければならないと訴えた。

複数の関係者が明らかにしたところでは、中国指導部は今年の成長率を最低でも5%に乗せて、失業者を増やさないようにすることを目指している。

モルガン・スタンレーのアナリストチームは、政策担当者が経済のハードランディングを避けるために不動産規制の一部も緩和するだろうと予想した。だが不動産バブルの懸念が残っているので、抜本的な政策転換はありそうにないという。

(Kevin Yao記者)

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