- 2022/03/01 掲載
「安全」へ理解醸成進まず=23年春放出、依然不透明―原発事故から11年
政府は2023年春をめどに、東京電力福島第1原発から出る放射性物質トリチウムを含む処理水の海洋放出を始める方針だ。しかし、原発事故から11年たつが、なお14カ国・地域が福島県産などの食品に対し輸入規制を継続するなど風評被害は拭えないまま。処理水の海洋放出に強く反発する中国や地元漁業者の理解を得た上で、政府が計画通り実行できるかは依然不透明だ。
政府は昨年12月、風評被害の抑制に向けた行動計画を策定した。国内外で安全性に関する情報発信を強化する一方、風評被害で水産物の価格が大きく下落するなど影響が生じた場合には水産物の一時買い取りなど機動的に対策を講じるのが柱。21年度補正予算で300億円を確保した。
政府は海洋放出に当たって、処理水を海水で100倍以上に希釈し、トリチウム濃度を国の基準値の40分の1未満に薄める。さらに、希釈後は新たに設置する海底トンネルを通し、原発から約1キロの沖合に流すことで漁業への影響を軽減させる考えだ。
そのための工事着工には地元自治体の了解が必要だが、風評被害への懸念が根強く、テロ対策の不備など原発で不祥事が続く東電への不信感も大きい。計画通りに進むかは全く見通せない状況だ。
国際原子力機関(IAEA)の調査団が2月に来日し、処理水の安全性について検証を行った。4月をめどに内容を公表するが、その後も検証を続け、放出開始までに総括的な報告書も取りまとめる予定だ。金子原二郎農林水産相は、一連の検証で「安全性に対する信頼性が高まる」と期待する。ただ、地元漁業者から理解を得るのは容易でなく、「努力に努力を重ねていくしかない」と述べた。
【時事通信社】
PR
PR
PR