• 2022/05/09 掲載

長期金利の上昇抑制が重要、景気への刺激維持=3月日銀議事要旨

ロイター

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[東京 9日 ロイター] - 日銀が3月17―18日に開いた金融政策決定会合で、複数の政策委員から、米国で予想される利上げの加速で日本の長期金利への上昇圧力が高まる可能性があるが、金融政策面からの景気刺激効果を維持する観点から、指し値オペなどで上昇圧力を抑制することが重要との指摘が出ていたことが判明した。一方、1人の委員が、資源高の中でも景気回復は続くとして「追加緩和が必要な局面にはない」と発言していた。

日銀が9日、同会合の議事要旨を公表した。この会合後、長期金利が許容変動幅の上限プラス0.25%を上回る可能性が高まったことで、日銀は初の連続指し値オペを3月29日から実施するなど長期金利の抑制姿勢を鮮明にした。

金利の上昇抑制が重要と指摘した委員のうち1人は、予想物価上昇率が上昇しており、名目金利の上昇を抑制して実質金利を一段と引き下げれば設備投資等の刺激効果が強まると期待できると述べた。

<1人の委員「追加緩和は必要でない」>

3月の決定会合はロシアのウクライナ侵攻で資源価格が急騰する中で開かれたが、金融政策は現状維持を賛成多数で決定。声明文では当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば「躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる」と改めて表明した。

ある委員は、資源価格等の上昇で短期的には日本のインフレ率が2%を超える可能性もあるが「今後、経済・物価への下押し圧力が強まれば、デフレが再来するリスクすらある」とした。物価の基調が安定的・持続的に物価安定目標に到達するまで金融緩和を継続し、企業収益から賃上げ、設備投資増加への好循環の動きを後押しすることが適当だと話し「物価安定目標の達成が危ぶまれる場合には、躊躇なく機動的に対応すべきだ」と語った。

一方、1人の委員は、日本経済が資源高で下押し圧力を受けるとしても「感染症や供給制約の影響が和らぐもとで景気回復は続き、基調的な物価上昇率も高まっていくと予想されるため、追加緩和が必要な局面にはない」との見方を示した。

<物価の「基調」、どう説明するか>

物価動向について、ある委員は、1970年代の世界的なインフレ局面で日本の消費者物価の上昇率が主要先進国の中で最も高かった事実を指摘した上で、日本企業にみられる値上げに否定的な同調圧力は「ひとたび値上げの動きが生じれば、次々と連鎖的に広がっていく可能性を示唆している」と述べた。

ただ、物価のリスクとして、米連邦準備理事会(FRB)によるバランスシートの縮小開始などを契機に資源価格が反落する可能性もあるとして「2022年度後半以降は、むしろ物価の下振れリスクを警戒すべきだ」(1人の委員)との声も上がった。

携帯電話通信料による物価押し下げ効果が剥落し、4月の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の前年比伸び率が2%に迫るとみられる中、3月の決定会合では物価の基調判断について、対外的な情報発信のあり方が議論された。

何人かの委員が「展望リポートにおける示し方を含め、物価の基調に関する評価や見通しの説明を工夫していく必要がある」との見解を示した。ある委員は「物価の基調判断において、生鮮食品やエネルギーなど価格の振れやすい品目を除くことは重要だが、国民生活との関連の深い生鮮食品やエネルギーを除いた計数だけで物価情勢や金融政策スタンスの説明を行うと、広く国民の理解を得ることは難しくなる恐れがある」と指摘。企業収益や賃金の上昇を伴いながら、物価が基調として上昇する好循環が実現しているかどうか、といった観点から説明を行うことが重要だとした。

4月の金融政策決定会合後に公表された展望リポートでは、政策委員のコアCPIの見通しだけでなく、生鮮食品とエネルギーを除くベースの物価見通しも合わせて掲載された。

<コロナによる消費行動の変化、「ある程度構造的」>

日本経済は、新型コロナの感染者数とまん延防止等重点措置などの政府の対応が変動を規定する要因の1つになっている。

3月会合では、ある委員が「感染症の影響により、企業規模・業種間の業況格差が拡大しているが、その背後にある個人の消費行動の変化はある程度構造的だ」と指摘。「こうした格差は感染症収束後も完全には解消しない可能性が高い」と述べた。

為替円安が家計や企業のマインドに与える影響については「同時に資源価格の上昇を伴うかどうかといった外部環境によっても異なる可能性があるため、今後の動向を注視していく必要がある」(ある委員)との指摘が出ていた。

(和田崇彦)

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