- 2022/05/09 掲載
アングル:米国株、大幅下落でも値ごろ感出ず インフレと金利警戒
S&P500種総合指数は年初から13.5%下落し、リフィニティブのデータストリームによると、予想利益に基づく予想PERは昨年末の21.7倍から17.9倍に低下した。
株価がこれまで新型コロナウイルスのパンデミック後に付けた安値から急反発した際には、多くの投資家がPERの高さを無視する傾向があった。しかしFRBが金融引き締めに転じた今年は、割高な銘柄はすぐに売りたたかれる。
PERの低下により、安値を拾いたい一部投資家にとっては株の魅力が高まるかもしれない。しかし、まだ十分な割安水準ではないとの見方もある。
コザド・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、J・ブライアント・エバンス氏は「株価は適正価値に近づきつつあるが、まだ到達してはいない」と指摘。「債券利回り(の上昇)、インフレ、国内総生産(GDP)と経済全般の動向を踏まえれば、まだ適正価値には遠い」と述べた。
米連邦公開市場委員会(FOMC)が4日に50ベーシスポイント(bp)利上げし、今後も同幅の利上げをする意向を表明して以来、株価は乱高下。S&P500種は5週間連続で下落し、値下がりは2011年半ば以来の最長記録となった。
11日発表の4月の消費者物価指数(CPI)が予想よりも大きな上昇になれば、金融引き締めが強まるとの観測から相場はさらに荒れる可能性もある。
トルイスト・アドバイザリー・サービシズのキース・ラーナー共同最高投資責任者は最近の顧客向けノートで「バリュエーションと市場心理が健全にリセットされた」としながらも、「これから株価が持続的に上昇するには、FRBが景気をむやみに損なうことなくインフレを抑えられるという信頼感が、投資家の間でもっと高まる必要がありそうだ」と指摘した。
S&P500種全体の先行きの予想PERは最近下落したものの、長期平均の15.5倍に比べればなお高い。
リフィニティブのデータによると、S&P500を構成する企業の利益は今年、約9%増益の見通しとなっており、株価の魅力を高める材料になるかもしれない。第1・四半期の決算も、全般に予想を上回る内容だった。
米国債利回りの上昇が続くかどうかは今後の株価を左右する要因の1つとなりそうだ。利回りが上昇すると、特にハイテクなどグロース(成長)株の魅力は衰える。他のセクターよりもキャッシュフローが入る時期が将来に偏っている場合が多く、高金利になると割引現在価値が下がるからだ。
6日朝のリフィニティブ・データストリームのデータによると、S&P500種の情報技術セクターは、予想PERが昨年末の28.5倍から現在は21.4倍に下がっている。
しかしS&P500種全体に比べると、このセクターのPERにはなお20%のプレミアムが付いており、過去5年間の15%を上回っている。
コメリカ・ウェルス・マネジメントのジョン・リンチ最高投資責任者は、10年物米国債利回りが3.0─3.5%の範囲で推移し続けると、「PERを圧迫し続け、ひいてはグロース株とハイテク株の割引現在価値を押し下げる図式が継続する」とし、グロース株よりもバリュー株に有利になるとの見方を示した。
リンチ氏は、利回り上昇による株価圧迫は「おおむね織り込み済みだ」としながらも、「この要因が消え去るとは考えていない。しぶとく残るだろう」と述べた。
(Lewis Krauskopf記者)
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