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- 2023/11/21 掲載
なぜ鈴与がスカイマークの筆頭株主に?実現する、他社を寄せ付けない航空経営とは
連載:「北島幸司の航空業界トレンド」
航空会社勤務歴を活かし、雑誌やWEBメディアで航空や旅に関する記事や連載コラムを執筆する航空ジャーナリスト。世界の航空の現場を取材し、内容をわかりやすく解説する。テレビ、ラジオの出演経験もあり、航空関係の講演を随時行っている。ブログ「Avian Wing」の他、エアラインなど取材対象の正式な許可を得たYouTube チャンネル「そらオヤジ組」も更新中。大阪府出身で航空ジャーナリスト協会に所属する。
鈴与がスカイマークの筆頭株主に変更
インテグラルが一部株式を鈴与に譲渡したことにより、スカイマークの株式構成はインテグラルが16.58%で第1位だったものが、4.86%の第5位へと下がった。そして、鈴与がスカイマークの株主構成で第1位の13.01%になり、ANAホールディングスは変わらず第2位の株主となった。そもそもスカイマークは、2022年12月に東証グロース市場へ新規上場(東証マザーズ市場からの再上場)を果たした。その後ロックアップ期間を経て、インテグラルは譲渡先を一部エアトリ、その後、鈴与に売却することになったのだ。
鈴与グループのフジドリームエアラインズ(FDA)は、日系航空会社の輸送力ランキングでは10位、株式売却先のスカイマークは4位と小規模会社が中堅企業へ出資する形となった。スカイマークはFDAの4倍の輸送力を持つ。これで、日本の航空会社では初めて、株主構成でJAL系とANAの資本が並んだことになる。鈴与の100%子会社であるFDAは、JALとコードシェアを実施する提携関係にあるからだ。
インテグラルの「スカイマーク株式の一部譲渡に関するお知らせ」には、譲渡の理由を「(前略)今般、スカイマークの重要取引先である鈴与ホールディングスに株式を一部譲渡することで、スカイマークの理念を尊重する親密株主となっていただけますと共に、スカイマークにとってメリットのある事業連携の検討による事業価値向上が期待されます」と記載されている。
2015年に経営破綻…平たんではなかったスカイマークの歩み
ここで、スカイマークの歴史を振り返ってみよう。スカイマークは1998年に就航を開始。当時は、35年ぶりの定期航空運送事業会社の誕生とのことで話題になり期待感が高まった。東京福岡間の航空運賃を当時のANA、JAL大手の半額を提示し、利用者は格安で国内旅行ができる夢を見た。しかし、大手の運賃値下げによる対抗で経営が不安定になる。2004年には、経営をIT業界経営者の西久保 愼一氏に委ね、機材を整理することで再び経営環境は上昇傾向に転じたが、それも続かなかった。身の丈以上の大型航空機の発注で、経営が急速に悪化し、2015年に経営破綻したのだ。
筆者は、就航初年の1998年から2006年までスカイマークに在籍した。その間、4人の社長が就任している。経営トップが変われば、社員の意識も変わる。上の顔色を窺う同僚が多かった。
経営破綻が起こり、そこに現れたのが救世主のインテグラルである。その際、資金出資だけでなく、優れた経営者として名声のある佐山 展生氏が会長になる。その後は、再上場も行い、順風満帆かと思いきや、2021年には佐山氏は突然退任する。前年に就任した洞(ほら)駿社長と共にその後就任した山本 礼次郎氏が会長となり現在に至る。そして、今回のスカイマーク筆頭株主交代だ。 【次ページ】なぜ鈴与への筆頭株主交代が行われたのか?
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