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- 2023/12/28 掲載
【独占】豪カンタス航空の20時間の異次元フライト、「超」長距離飛行の知られざる裏側
連載:「北島幸司の航空業界トレンド」
オーストラリアが抱える長距離飛行の宿命
1920年の創立間もない頃から長距離飛行を行ってきた同社。18世紀から続く宗主国(英国)と植民地(オーストラリア)の関係から、2国間の移動は移民者の子孫を含めて需要が高かった。2国間を直行で結ぶことは、両国民、特にオーストラリアの人々の悲願であった。そうした背景から1947年には、シドニーとロンドンを結ぶ1.7万㎞を超える路線が「カンガルールート」として定着。当時はロッキードコンステレーションというプロペラ機で7都市をも経由して、58時間をかけて両都市を結んでいたという。途中で何度も寄港する様子がカンガルーのジャンプのように見えることから、カンガルールートの呼び名がついた。
日本では、JALが最初の国際線として東京とサンフランシスコ間の8200㎞あまりを飛行したのが、1954年のことだ。その時期同社はすでに、シドニーとロンドン間の路線開設後数年経過していただけでなく、JAL路線の2倍以上になる1.7万キロの長距離を飛行していた。
また、長距離飛行に強みを持つ理由として、地理的な事情がある、北半球に住む我々には理解しづらいことかもしれないが、オーストラリアからはどこへ行くにも遠いのだ。下のJALの国際線中長距離の路線図とカンタス航空の国際線路線図を見れば一目瞭然だ。カンタス航空の国際線路線図(下図右)のチューリップの花びらにも見えて広がる路線は、どれも皆長く伸びている。
ちなみにカンタス航空は、ジェット旅客機の死亡事故を一度も起こしたことがない。長距離運航は、航空機材への負担がかかるにもかかわらず、だ。同社の整備技術向上の努力のたまものといえるだろう。
キャビンデザインにおけるカンタス航空とJALとの比較
2023年6月、同社は使用する航空機の内装を公開した。ファーストクラス6席、ビジネスクラス52席、プレミアムエコノミークラス40席、エコノミークラス140席の合計238席である。一方JALはその後10月に、東京とニューヨーク間などの長距離国際線の機材を、同社と同型のエアバスA350-1000に決定した。機内仕様はファーストクラス6席、ビジネスクラス54席、プレミアムエコノミークラス24席、エコノミークラス155席の合計239席である。
カンタス航空はJALより長距離路線に特化している。プレミアムエコノミークラスの席数はJALより16席多く、エコノミークラスは15席少なくなったが、全体では1席違いという似た席数比だ。
両社ともに同型機の世界標準となる300席台の座席数より大幅に少ない。
筆者は今回本社を訪問し、同社の長距離飛行戦略とその裏側に迫った。超長距離飛行計画「プロジェクトサンライズ」や世界初の設備、長距離フライトを支える統制現場の裏側をお伝えする。 【次ページ】本社を訪問、超長距離飛行計画「プロジェクトサンライズ」に迫る
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