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- 2006/02/07 掲載
グローバルビジネスでの異文化マネジメント
グローバルな異文化の中でシナジーを発揮しビジネスを成功させるマネジメントについて
グローバルビジネスが大変になる5つの要因

●筆者の花王での職歴
1948年・花王(株)研究所配属で入社。以降、ドイツでの約1年間を含む11年間の工場勤務を経て、1989年から家庭用日用品のパーソナルケア事業企画・アジア担当に配転となり、以来一貫してアジア家庭用 品の事業に関わる。この間、1994年から3年間マレーシアに、2001年から1年半中国に、マーケティングや商品開発の責任者として駐在歴がある。2002年末からは、家庭用品のアジア事業全般の企画担当として事業戦略・中期計画・現地オペレーション改善等の業務にかかわっている。
1985年に中小企業診断士資格取得。
●筆者の海外事業担当暦
ドイツで約1年間小さな化学品工場の責任者としてスタート。その後、家庭用日用雑貨品の事業企画に配転となり、以来一貫してアジア事業を担当(インド以西での事業展開はなく、中華圏・アセアン圏の計9ヶ国)この間、マレーシアに3年、中国に1年半、開発やMK責任者として通算6年弱の駐在歴がある。現在は、日本でアジア事業企画担当・シニアマネージャー。
よく「アジアは1つ」という言葉を耳にするが、これは思い込みに過ぎない。
海を隔てた広大な地域に異なった生活様式や宗教・価値観に基づく多くの国があり民族が生活している。政治体制も経済の発展度合いも異なり、生活のテンポや住環境もかなり違う。また、流通近代化が急速に進行している国もあれば、旧来の流通業が強い国もあり、流通構造も一様ではない。
欧米系の競合企業が驚くような資金を使って展開し大きな存在感を見せる地域もあれば、しぶとく立ち向かってくる地場企業の存在が無視できない地域もある。要するに、対象とする消費者、流通、競合企業は国に応じてさまざまに異なるわけで、それらに個々に対応しながら、しかも全体としてまとめて成果を上げていくことがグローバルなビジネスを展開する上で大変なのである。
このような大変さの原因を、5つの要因に分けて説明していくことにする。
1 空間的な広がり
世界という空間的な広がりである。仮にこの地球上に日本人だけが存在しており、その中でビジネスを行っている、という状況を想像していただきたい。
意思疎通は全く問題がない。しかし、トップの意思や指示がどの程度的確に伝わり理解されるだろうか。また狭い地域内では、現場情報はさまざまなルートを通して迅速に入手できるが、範囲が広くなればなるほど、現地で日々起こっている現場情報は非常に入り難い。異文化がどうのと言う前に、地理的な条件は効率的な事業運営に大きな制約となるのである。
2 事業状況の多様性
世界各国の事業環境と、その中に置かれた各社の企業規模・競争力という事業状況がそれぞれ異なっていること。たとえば、ある国で強い事業が別の国では弱くなってしまうケースがある。このような事態が 国ごとに、事業ごとに出てきた場合、どの国、どの事業を優先的に立て直すか、という課題に直面する。こういった事態に対しては、以下のようなトレードオフの関係にある2つの要求を同時に達成していかなければならない。
すなわち、経営資源を集約して効率的な事業をしたいという要求と、現地ニーズに対応した商品を作り個々の現地競争力を高めたいという要求である。ここにも文化とは関係のないマネジメント固有の大変さがある。
3 日本における成功体験
日本企業の海外進出における姿勢のあり方にも問題がある。海外に進出する場合、日本において成功している事業をモデルにして展開するケースが多いということだ。自社の強みを武器にすることは当然のことだ。しかし、それに頼りすぎることは非常に危険を伴う。
その強みが通用するにはどんな条件が必要なのか、あるいは、どの部分を残しモディファイするのかといった分析をおろそかにしてしまう可能性が高いからだ。事前の分析なしに、いざ現地で事業展開となった時、思わぬ障害に会ってマネジメントが大変だということも十分起こり得る。
4 コストの尺度の違い
現地におけるコストパフォーマンスを計り違えてしまう場合も少なくない。日本と現地ではそれぞれ尺度が異なる。ところがこの点のすり合わせが十分でないまま仕事が進み、大変な状況になることも意外に多い。これは3つ目の要因と関係する場合も結構ある。
国内では十分検討のうえ事業化され、しかも何かあれば素早く修正できるので問題は起こらないが、状況の違う海外では問題が起きやすく、両者の差を抱えこんだまま事業展開してしまい収益に苦しむことがある。
5 文化の違い
当たり前だが、グローバル環境は異文化の集積でできあがっているということである。分かりやすい例が最近ある新聞に掲載された。トヨタ自動車のレクサスの日本展開を前にしたアメリカ研修に関する記事だ。アメリカで成功している「親しい友人としてのおもてなし」という店舗コンセプトについて、日本の 「おもてなし」の感覚と全然違うために、どう日本流に焼き直していくのかが大きな課題であるという内容であった。
異文化ということを簡単に説明するとすればこのようなことになろう。すなわち、日本人と外国人では価値観・行動規範等に基づく評価基準が違うのである。したがって、共通の価値基準のない者同士がビジネスをする際、お互いに分かり合うことを大変だと感じさせられるわけだ。
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