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  • 2023/02/01 掲載

なぜマイクロソフト新社長はコンサルタント? 大規模人員削減と新人事から見える今後

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米マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは1月18日、世界的なニュースとなった1万人の人員削減を明言した従業員宛てのメモの最後に、次のように記した。「2023年の始まりという時期を考えると、業界にとってもマイクロソフトにとってもショータイムです」。人員削減の理由を、コスト構造を収益と顧客の需要に合わせるためだと語る。一方、1週間前の1月11日には、2022年7月1日の吉田仁志前社長の退任以来、長らく空席だった日本マイクロソフトの社長に、戦略コンサルのボストン コンサルティング グループ(BCG)などで要職を歴任してきた津坂美樹氏が就任すると発表した。米IT業界に訪れている構造転換の兆しと日本マイクロソフトの役員人事は一体と見る必要がある。

執筆:友永 慎哉

執筆:友永 慎哉

製造業向け基幹系システムの開発を経験後、企業ITの編集、ライター業に従事。ファイナンス、サプライチェーンなど、企業経営の知識を軸にした執筆に強みを持つ。インダストリー4.0など新たな技術による製造業の世界的な変革や、Systems of Records(SoR)からSystems of Engagement(SoE)への移行、情報システムのクラウドシフトなどに注目する。GAFAなど巨大IT企業が金融、流通小売り、サービスといった既存の枠組みを塗り替えるなど、テクノロジーが主導する産業の変化について情報を収集・発信している。

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サティア・ナデラCEOの1月18日のブログ

強調される前提の変化、マイクロソフトCEOの思惑

 ナデラ氏が「件名: 短期的および長期的な機会に焦点を当てる」と題したメモの冒頭で強調したのは、コロナ禍で顧客やパートナーがデジタル支出を最適化し、より少ないリソースでより多くの成果を挙げていることを、マイクロソフト自身が目の当たりにしているという認識である。

 1月5日付けで、マイクロソフトのアジアプレジデントを務めるアーメッド・ジャミール・マザーリ氏が、日本マイクロソフトの社長年頭挨拶で強調した「Doing more with less(より少ないリソースでより多くのことを実施する)を行うための支援」とも一致する。

 マザーリ氏は、クラウドを通じてインフラやデータ、ハイブリッドワーク環境、開発者ツール、セキュリティなどを提供するとともに、イノベーションを促進して企業の持続的な成長と社会課題の解決を促すと指摘。さらに「あらゆる仕事の中にAIや自動化、ロボット技術が取り込まれるため、デジタルテクノロジーへの精通が必須になる」と予想している。

 そして、さっそくのタイミングで具体的な施策を打ち出した。論文執筆やコーディングを含め、さまざまな質問に答える能力を持つAI「ChatGPT(チャットGPT)」を開発するOpenAI(オープンAI)に対し、マイクロソフトなどは100億ドル(約1.3兆円)の巨額投資を行うことが明らかになったのである。

内製化という新たな波

 こうしたマイクロソフトの動向について、事実関係を整理してみると次のようにまとめられる。

 「今後、企業の営業やマーケティングなどの活動にオンライン営業などを含めてITが占める割合がより大きくなる。実際に顧客がその方向に向かっている。マイクロソフトはそれを支援する」といったところだ。

 これをIT部門の視点で翻訳してみると「企業のビジネスを支えるITの稼働を、AIなどを活用して自動化し、ユーザー自身が運用までできるように内製化することで、運用コストを削減する」と想定できるのである。

 内製化というキーワードにたどりついたが、これを裏付けるデータも出てきている。調査会社のガートナーが1月18日に発表した「日本におけるソフトウエア開発の内製化に関する調査結果」で、企業、個人のいずれも内製化の方向に向かっていると指摘した。

 内製化に向かう理由を見ると、システムインテグレーション(SI)に支払うコストが高額であることを背景にした「開発コストの削減」が55.2%と最も多く、SI企業とのやり取りの時間が長いことなどを理由に「開発、実装、保守対応の迅速化」を図るとの回答が49.7%と続いている。

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企業の方向性が内製化である理由
(出典:Gartner(2023年1月))

 ガートナーのシニアディレクターである片山治利氏は「企業の売り上げに直接関係する領域のアプリケーション開発は、本来ならば積極的な投資対象になるべきだが、コストが強く意識される可能性がある」と発表文でコメントしている。

 さらに、もう1つの要因として、SI企業とのやり取りの時間を挙げていることも重要な変化だ。デジタルトランスフォーメーション(DX)の成否は、優れたアイデアをいかに素早くサービスとして開始できるかにあるからだ。

 SI企業に任せるのではなく、内製化によって自社でITを抱えなければ、スピードで負けてしまうという認識を、すでに企業が下していることを示す調査結果である。

【次ページ】外資系IT企業の日本法人社長には何が求められるのか

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