• 会員限定
  • 2023/01/25 掲載

マイクロソフトがOpenAIへ「1.3兆円投資」のワケ、ChatGPTで対グーグルとOffice強化

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
記事をお気に入りリストに登録することができます。
論文執筆やコーディングを含め、さまざまな質問に答える能力を持つAI「ChatGPT(チャットGPT)」。この人工知能(AI)を開発したOpenAI(オープンAI)に対し、マイクロソフトなどが100億ドル(約1.3兆円)の巨額投資を行う。マイクロソフトは2019年に10億ドルを投資し、すでにOpenAIのAIをOfficeなど自社プロダクトに活用しており、今回の投資によりAI統合がさらに進むことが予想される。マイクロソフトは、OpenAIのAIテクノロジーをどのように活用しようとしているのか。

執筆:細谷 元、ビジネス+IT編集部

執筆:細谷 元、ビジネス+IT編集部

細谷 元
バークリー音大提携校で2年間ジャズ/音楽理論を学ぶ。その後、通訳・翻訳者を経て24歳で大学入学。学部では国際関係、修士では英大学院で経済・政治・哲学を専攻。国内コンサルティング会社、シンガポールの日系通信社を経てLivit参画。興味分野は、メディアテクノロジーの進化と社会変化。2014〜15年頃テックメディアの立ち上げにあたり、ドローンの可能性を模索。ドローンレース・ドバイ世界大会に選手として出場。現在、音楽制作ソフト、3Dソフト、ゲームエンジンを活用した「リアルタイム・プロダクション」の実験的取り組みでVRコンテンツを制作、英語圏の視聴者向けに配信。YouTubeではVR動画単体で再生150万回以上を達成。最近購入したSony a7s3を活用した映像制作も実施中。
http://livit.media/

photo

マイクロソフト、100億ドルの超大型投資

 世界のウェブ検索エンジン市場で圧倒的なシェアを誇るグーグルだが、その地位は安泰ではない。マイクロソフトが今注目されるChatGPTなどOpenAIのAIをフル活用し、同社の検索エンジンBingを大幅にアップグレードしようとしているからだ。

 Statistaがまとめた2022年12月時点の世界の検索エンジン(デスクトップ利用)市場のシェアランキングでは、グーグルが84.4%とほぼ独占状態であるが、現時点でBingが8.95%と2位につけている。ChatGPTやDall-E2などOpenAIが開発しているAIの精度や可能性を考慮すると、市場シェアは大きく変化することも考えられる。

 マイクロソフトのOpenAIに対する期待は、同社の投資意欲に見て取ることができる。マイクロソフトは2019年にOpenAIに10億ドルを投資し、ChatGPTの前身となるGPT-3の独占ライセンスを取得した。

 マイクロソフトによる投資はこれにとどまらない。ChatGPTが2022年11月にリリースされて以降、マイクロソフトが追加の大型投資を実施するのではないかとの臆測が各メディアで報じられるようになっていた。

 そして1月23日、マイクロソフトがOpenAIに100億ドル(約1.3兆円)を投じることが明らかになった。ブルームバーグらの報道によると、100億ドルの投資は複数年かけて行われるという。この新規の投資により、OpenAIの評価額は290億ドルになる。

 マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは発表文で、「最先端のAIの研究を責任を持って前進させ、AIを新たな技術プラットフォームとして民主化させるという共通の熱意のもと、OpenAIとパートナーシップを結んだ」と説明している。

 さらにOpenAI側は23日の発表で、手がけるAIのモデルのすべてのトレーニングにおいて、マイクロソフトのクラウド基盤Azureを活用すると声明を出し、AzureはOpenAIの独占的なクラウド提供者と位置付けた。

 両社の公式発表では、具体的な投資額や取引額は明らかにされていないが、このスキームで、マイクロソフトは投資を回収するまで、OpenAIの利益を75%取得し、投資が回収できた段階で、マイクロソフトがOpenAIの株式49%、他の投資家が49%、そしてOpenAIの親会社が残りの2%を保持する構造に移行するとSemaforは報じていた。

マイクロソフト、検索エンジンにAI活用へ

 では、マイクロソフトはどのような形でOpenAIのAIを活用しようとしているのか。

 まず、公式の発表として「Azure OpenAI Service」の一般提供を開始した。OpenAIが提供する「GPT-3.5」や「Codex」「DALL・E 2」といったAIモデルをさまざまなアプリケーションの作成に活用できる。また、近いうちに「ChatGPT」へのアクセスも可能になるという。

画像
マイクロソフトのAIへのこれまでの取り組み

 これらはOpenAIを活用する基盤としてのAzureでのサービス提供となり、これはこれで対Amazon Web Service(AWS)として強力なツールとして期待されているが、マイクロソフトのプロダクトそのものにもより深く関わってくる可能性も指摘されている。

 米メディアのThe Informationは2023年1月3日に2人の関係筋の話として、マイクロソフトがBingにChatGPTを統合させ、人間らしい回答を検索結果として返すバージョンをローンチする計画だと伝えている。

 もしChatGPTのような機能を検索エンジンに実装することができれば、BingはグーグルのKnowledge Graphに対抗できるようになるとみられる。Knowledge Graphとは、グーグルがウェブクロールとユーザーフィードバックから定期的に更新しているナレッジベースであり、検索を素早く実行するのに欠かせないものだ。

画像
グーグルの地位も安泰ではない?
(Photo/Getty Images)

 ChatGPTを使うように、AIに質問を投げかけると、その質問に応じ回答を返し、さらに文脈に沿った関連情報を検索結果として提示するようなAI検索エンジンが登場すれば、グーグルにとって脅威となることは間違いない。

 たとえば、ジョギングに最適な靴を購入したい場合、グーグル検索であれば「ジョギング シューズ おすすめ」などのキーワードで検索することが多いはず。これに対しグーグル検索エンジンは、さまざまなシューズのレビューブログや動画、また購入サイトのリンクを提示してくる。利用者は、この提示されたリンクの情報をそれぞれ調べ、どのシューズを購入するのかを決めることになる。

 一方、ChatGPTのようなAIが搭載された検索エンジンであれば、「ジョギングにおすすめのシューズは?」という質問を投げかけると、AIが具体的な目的や予算を絞り込む会話に誘導し、その上で最適なシューズを提示するといったことなどが可能になると考えられる。

【次ページ】WordなどOffice製品にAI搭載という報道も

関連タグ

関連コンテンツ

オンライン

Slack AI Day

Slack AI の日本語ローンチを祝し、革新の軌跡を振り返り、未来への一歩を踏み出す特別なイベントを開催します。 「コミュニケーションの先の未来を再定義する」というテーマのもと、Slack はメッセージングツールから AI を活用した強力なプラットフォームへと進化しました。 私たちの働き方を根本から変えるこのプラットフォームでは、CRM やアプリケーションの複数同時活用が可能で、 あらゆるデジタル業務が Slack を通じて円滑に進行します。 また、AI の強化により、過去の会話や見落としていた情報を活用して、ワンクリックで最適なコミュニケーションを実現することができます。 この記念すべきイベントでは、「新しい働き方」と業務における生成 AI の活用に焦点を当てます。 Slack AI を通じて、私たちは日常の業務プロセスを根本から変革し、生産性の飛躍的な向上を目指します。 AI とオートメーションの融合が、時間を要する従来のプロセスを一新。 Salesforce の Customer 360 と連携した Slack で働き方が劇的に変わります。 Slack を愛用し続けてくださる皆さま、そしてこれから Slack をご利用してくださる皆さまと共に、AI による業務効率化の新時代を創ります。 進化を遂げた Slackと一緒に、未来の働き方を再定義し、その可能性を探求しませんか? 【このような方におすすめです】 ・業務における生成 AI の活用を模索している方 ・より効率的な働き方・チームコミュニケーションを模索している方 ・Slack でできることを知りたい方、Slack の利用を検討している方 ・Slack を使っているけど、"コミュニケーション" 以外の新しい利用価値を知りたい方 ・部門・プロジェクトごとの部分的な Slack 利用から組織全体へ広げていきたい方 ・Slack 無償版から有償版へ切り替えたい方

あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます