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  • 2024/03/29 掲載

マイクロイノベーションとは何か?ガートナーが説くCIOの「盲点」と“やるべきこと”

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ビジネスに大きな影響を与える小さなイノベーション、いわゆる「マイクロイノベーション」がIT部門外で増加している。しかし、多くの最高技術責任者(CIO)は、こうしたイノベーション自体やそれらを支援するアプローチを把握しきれていないという。なぜ、CIOの「盲点」は生じてしまうのだろうか。「盲点」を克服し、マイクロイノベーションを成功に導くアクションについて、ガートナーが解説する。

執筆:フリーライター 翁長 潤

執筆:フリーライター 翁長 潤

ライター。2010年、IT製品・サービスに関する情報提供を目的とするWebサイトにて医療チャンネルの立ち上げに参画し、担当記者として医療分野のIT推進の動向を取材して記事を制作。2011年、日本医療情報学会認定の医療情報技師資格を取得後、病院・診療所向け合わせて30社以上の電子カルテベンダーを取材した実績がある。医療関連システムの製品情報や導入事例、医療IT政策・市場動向に関する取材を行ってきた。

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CIOの盲点はどこにあり、なぜ生じるのだろうか
(出典:ガートナー(2023年11月))

デジタル変革で明らかになった“3つ”の現実

 「現在、多くの企業がデジタル・デリバリーのイノベーションをビジネス部門とIT部門で共同して実施するようになりました。また、市民開発が進展する中で、CIOはもはやすべてのデジタル・デリバリー技術に関して精通しているという時代ではなくなっています」と語るのは、ガートナー バイス プレジデント, アナリスト/ガートナーフェロー 藤原 恒夫氏だ。

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ガートナー バイス プレジデント, アナリスト/ガートナーフェロー
藤原 恒夫氏

 藤原氏によると、CIOは組織のテクノロジー資産全体を所有できず、それが原因となって盲点が生じているという。その上で、イノベーションの責任を担うIT/ビジネス・リーダーを対象とした調査結果として、3つの現実が明らかになったと説明する。

 1つ目が「企業の64%では、IT部門とビジネス部門がイノベーションのオーナーシップを共有している」点だ。藤原氏は「ビジネス部門やIT部門が単独でデジタルのイノベーションを進める時代ではありません」と語る。

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部門ごとに単独でイノベーションを進める時代は終わりつつある
(出典:ガートナー(2023年11月))

 2つ目が「イノベーションに対するエグゼクティブの支援は62%増大している」点だ。過去2年間のイノベーションの実践における変化を振り返ると「リスク選好」や「人材配置/新規雇用」「イノベーションに対する資金提供」などによって、企業はイノベーションを増やしている。

 特に、デザイン思考や新しいアイデア創出などの既存従業員向けトレーニング/スキルアップへの投資は60%、経営幹部のイノベーションに対する支援は62%も増大し、調査開始以来で過去最大となっている。

 3つ目が「組織の70%が、イノベーションのサイクルタイムを短縮している」点だ。藤原氏は、このサイクルタイムは今後2年間でさらに短縮すると予測する。

マイクロイノベーションとは何か?

 ガートナーが2023年7月に公表した「イノベーション実践のハイプ・サイクル 2023年(Hype Cycle for Innovation Practices, 2023)」によると、ハイプ・サイクルにおける「(適応型)イノベーション・ガバナンス」は減滅期に位置づけられた。

 通常、イノベーション・ガバナンスとは、組織内でイノベーションのプロセスを管理し、効果的に推進するためのフレームワークや方針を指す。ガートナーが提唱する、適応型イノベーション・ガバナンスは、特に変化する市場や技術環境に柔軟に対応し、継続的なイノベーションを促進するアプローチを意味している。

 減滅期にある適応型イノベーション・ガバナンスに対して、黎明期として勢いが増しているのが「マイクロイノベーション」だ。藤原氏によると「マイクロイノベーションとは、通常1人、または数人によって迅速に生み出され、ビジネスに大きな影響を与える小さな変化のことを指す」という。

「小さなマイクロイノベーションが重なり合ってマクロなイノベーションになり、最終的に破壊的なイノベーションになることもあります」(藤原氏)

 2023年初頭に実施した調査では、回答企業の36%がマイクロイノベーションを採用しているという結果になった。

 藤原氏は、ビジネス部門が主導するマイクロイノベーションの4例を挙げ、「自組織で実践されているマイクロイノベーションをCIOが把握しているのは意外と少なく、それ以外がシャドーITである可能性は高いです」と語った。それこそがCIOの盲点につながっているのだ。

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マイクロイノベーションではどのようなことが行われているのだろうか
(出典:ガートナー(2023年11月))

 さらに藤原氏は、CIOの盲点についてケーススタディーを用いて説明した。1つ目が「要件に対する不完全な理解」だ。

「IT部門なしでビジネス部門が主導してイノベーションを展開した場合、ビジネス部門はビジネスプロセスやカスタマーエクスペリエンス、システムの機能面の複雑さには対応できる一方で、非機能要件を理解できていないチームメンバーは多いと思います。その結果、マイクロイノベーション・チームは、技術的な複雑さと非機能要件に悩まされています」(藤原氏)

 一般的に機能要件とは、システム開発において、クライアントから求められる機能のことである。一方、非機能要件とは、機能以外のユーザービリティや性能、拡張性、セキュリティなどの品質的に関連するもの全般を指す。

 昨今では、データプライバシーやサイバーセキュリティ、コード品質、スケーラビリティなどの技術的な複雑さも増している。藤原氏は「それらに関する教育や育成がされていないと本体、マイクロイノベーションをやってはいけません」と忠告する。

 2つ目の盲点が「IT部門が、IT部門外のテクノロジーに対して責任を担うよう求められる」ことだ。ガートナーが「ビジネス部門/機能的組織がビジネス主導ITの正式な管理責任またはオーナーシップを担うようIT組織に要求した回数」を調査したところ、IT部門は8週間に1回、ソリューションを受け取るよう求められることが明らかとなっている。

「ビジネス部門がIT部門に相談なしに開発したマイクロイノベーションが、IT部門に持ち込まれる可能性もあります。しかし、そのすべてに正当な理由があるわけではありません。ソリューションの管理にビジネス部門の多くの時間が取られているという理由で持ち込まれることも起きています」(藤原氏) 【次ページ】CIOの盲点をなくすカギは「○○の進化」

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