• 2008/06/06 掲載

【対談インタビュー】IT市場動向から考えるITパートナー選びとは

企業を支えるITのキーワードは仮想化とその後の最適化

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来る6月18日、例年3月に米ノベルが開催するBrainshareの日本版となる「Best of Brainshare ~Novell Focus Solution 2008~」が東京ステーションコンファレンスで開催される。ノベル 代表取締役社長 堀 昭一氏と、イベントで基調講演を行う予定のIDC Japan ソフトウェア/サービス グループディレクター 井出和之氏に、最新のIT市場についてお話をうかがった。2007年のIT市場はIDC Japanにて国内ITソフトウェア市場の調査分析をされている井出氏の目にどう写ったのか、今後の企業の成長を支えるためにはどのような視点でITパートナーを選べばいいのか、具体例と示唆に富む対談となった。

【IDC井出和之氏基調講演】Best of Brainshare ~Novell Focus Solution 2008~

成長が低迷するなか、
投資内容に変化が見られた2007年のIT市場

【マネジメント】IT市場動向から考えるITパートナー選びとは
ノベル
代表取締役社長
堀 昭一氏
――まず双方のお立場から見て、2007年というのはIT市場がどのような動きを見せた1年だったのでしょうか?

井出氏■
2007年のIT市場は、前年に比べて2.7%の成長と見ています。前年の成長率に比べれば若干いい数値ですが、まだ成長路線には戻っていません。産業セクタによる違いを見てみると、金融業界はそこそこ活性化されているようです。しかしそれも前向きな投資というより、必要に迫られてITの整備に取り組んだという印象が強いですね。IT投資は落ち着いていますが、ビジネスの進め方は構造的に大きく変化していると思います。たとえば実際に品物が少なくなったりする前に、品薄になるという情報が流れただけで金融をはじめ経済のさまざまな分野に影響を与えるようになっています。実際の物を動かすのではなく、情報によって実経済が動いているのです。情報の動きに国境はないので、日本もどんどん追随していかないと世界の動きから置いていかれることになるでしょう。

堀氏■私たちのビジネスから見ると、2007年はIT投資の内容に変化を感じられる1年でした。最も大きな変化は、Linuxがミッションクリティカルなシーンで使われるようになったということです。野村證券やみずほ銀行が使い始めたことが、大きく影響したようですね。金融の中核でも使えるという実績によって信頼性に対する評価が上がり、ほかの企業もそれに追随しているようです。

 企業のシステムへのLinuxの浸透は、サーバ統合の動きとも一体になっています。たとえば、パイオニア様はマイクロソフトのOSとSUSE Linuxのインターオペラビリティに注目して、サーバ統合を進めています。世界中にある1000台のサーバを仮想化することで、500台に減らそうという計画です。カシオ様でもSUSE Linuxを使ってWindowsサーバを仮想化しています。私たちはこうした環境に対して、マイクロソフトとノベルが協力してサポートできる体制を用意しています。ほとんどのLinuxベンダーはWindowsかLinuxかという選択を迫っていますが、実際のお客様の環境ではWindowsもLinuxも共存して使われています。サポート面でも、両者が歩み寄って対応していかなければなりません。そういった現実が明確になった1年だったのではないでしょうか。

井出氏■世界市場に対応していくためには、グローバルでサポートを受けられるIT環境を整えるということも重要になります。グローバルでサポートを受けられるのはLinuxの強みのひとつですね。

【マネジメント】IT市場動向から考えるITパートナー選びとは
IDC Japan
リサーチ 第2ユニット(ソフトウェア ITサービス)
グループディレクター
井出和之氏
堀氏■そうです。先に紹介したパイオニア様はSAPを使っていらっしゃいますが、SAPが動作を保証しているLinuxは、実はSUSE Linuxだけなんです。グローバルで活躍する企業では、世界でサポートを受けられるサービスを選んでいらっしゃいます。

井出氏■過去、日本企業は日本流のサービスを重視する傾向にありましたが、近年はもっと広い視点でサービスを選ぶようになってきていますね。ところで世界を結ぶシステムを構築するとなるとセキュリティも大切だと思うのですが、そのあたりに動きはありますか?

堀氏■ID管理などを日本だけではなくグローバルで利用する例が増えていますね。数ヶ国をまたぐ15万ユーザを統合するセキュリティシステムの構築例もあります。日本企業と海外の子会社で同じID管理システムを利用する例も増えています。

井出氏■ID管理などは国ごとに法規にも差がありますから、各国の基準に対応しないといけませんね。その視点でもグローバルなサービスが求められます。規模の視点でも、中国企業やグローバル企業では20万~30万人規模の企業もあるので、それらを管理するツールは必須になりつつある印象ですね。

堀氏■企業活動が国境を越えて、グローバル化してきているという流れを感じますね。

井出氏■そうですね。企業活動のそうした動きを支えるためには、製品を世界中で提供できるだけではなく、サポートとともにサービスとして提供できなければいけません。

――サポートと言えば、ノベルではマイクロソフトと協業してLinuxとWindowsの混在環境をサポートしていらっしゃいます。これもお客様からの強い要望が背景にあるのでしょうか?

堀氏■
そのとおりです。サーバを仮想化する場合はLinuxとWindowsとの共存環境が多いのですが、そうした環境をマイクロソフトとノベルの双方でサポートしていることも重視していただいているようです。お客様の方で問題点の厳密な切り分けができなくても、ノベルかマイクロソフトのどちらかに聞いてくれれば、双方で協力して対応していきます。

 また、大きな企業や案件に対しては、個別に技術者をアテンドしてサポートに当たっています。新しいことにチャレンジする企業においては、やはり技術者が対応して開発レベルで対応していかないといけないことも多いのです。こうした対応も用意しているので、ローカル、グローバル問わずミッションクリティカルなシステムでご利用いただけるようになってきているのではないかと思っています。


企業のグローバル化を支える
仮想化、最適化が大きな潮流に

――単にOSとしてLinuxを選択するだけではなく、サーバやデータセンタを仮想化するベースとしてLinuxを選択する企業も増えていると聞きますが?

井出氏■
サーバの仮想化は、たしかに大きな潮流です。しかし仮想化のメリットはコストの圧縮だけではありません。仮想化を行う前には、自社のIT環境の現実を把握しないといけないわけですが、それを把握できていない企業が多いと思います。仮想化をきっかけに自社のITの実際の内容を把握して無駄をなくし、堅牢でスピード感の高いシステムにしていけるでしょう。

堀氏■ノベルでは、データセンタはコンソリデーションから仮想化、最適化へと進んでいくと考えています。現在は仮想化が進んでいる状況。そしてまさに井出さんがおっしゃるとおり、仮想化の次のステップとしてITの最適化があると考えています。

井出氏■しかも、その最適化は1度行えばいいというものでもありません。ビジネスの最適は日々変わっていきますから。その変化に追随し続けることができるのが、仮想化されたIT環境の強みです。人材を含めたグローバルリソースをもっている企業をITのパートナーに選ばないといけません。

堀氏■仮想化後も常に最適な状態でITを活用していただけるよう、運用技術にも注目していただきたいですね。2008年2月、ノベルはPlateSpin社を買収しました。PlateSpinは日々の負荷を見てPtoV(物理環境から仮想環境へ)、VtoV(仮想環境から仮想環境へ)、VtoP(仮想環境から物理環境へ)の移行を支援する技術をもっています。この技術を活用することで、運用中のシステムを最適に保つことができます。


経営も運用もゴールは同じ
設計力、サポート力のあるITパートナーを選んで

【マネジメント】IT市場動向から考えるITパートナー選びとは
――企業のグローバル化などマクロ的視点では、仮想化とその後の最適化が今後のキーとなりそうですね。視点を変えて、システム運用者の立場で新しい潮流に対応するパートナー選びのポイントを教えてください。

井出氏■
経営者とシステム運用者は対立するように言われることもありますが、実は経営者も運用者もIT導入のゴールは同じはずなんです。システムにより経営や現場の業務を効率化し、生産性を向上させていくこと。これに尽きるわけです。それを考えたときに一番大切なことは、設計がきちんとできている企業とつきあうこと。どこまで考えて設計をしているか、業務フローをきちんと把握できているかを見極めなくてはいけません。特に、仮想化のように新しく難しい要素が入ってくればくるほど、上流の設計技術が重要になるでしょう。

堀氏■経営者、運用者を問わず、企業のみな様からよく聞かれる要望のひとつに安定稼働するものを長く使いたいというものがあります。ベンダとしては最新のものを提供したいのですが、特に大手企業は安定して動いている間は変えたくないという意向が強いようです。さらに言えば、ベンダとしては最新のものだけをサポートする方が楽だという事情もあります。でも、お客様は5年~10年のスパンで使えるものを求めていらっしゃいます。こうした声に対応するため、ノベルではExtended Supportを提供しています。これはシステムインテグレーターからもエンドユーザーからも好評を得ている。もっとも、こうした傾向がここまで顕著なのは日本の場合だけかもしれませんが。

井出氏■たしかに日本企業にはそういう傾向が強いですね。でも、IT、ビジネス双方が変わってきています。ビジネスの競争力を維持していくために、これからは日本でもいいものをどんどん取り込んでいくべきです。そういう視点でも仮想化はすばらしい技術ですよね。仮想環境で新しい技術を手軽にテストできますから。うまくいけばライブマイグレーションで、新しいシステムに移行もできます。

堀氏■新しいものへのチャレンジにもぜひ使っていただきたいのですが、逆に既存のものを活用するために使われるというお客様も増えているんですよ。業務を支える基幹アプリケーションはそうそう簡単に変えられませんが、古いアプリケーションやOSは最新のハードウェアをサポートしていない場合が多いのです。そこで住友電工様は仮想環境を構築して、最新のハードウェア上に構築された環境で従来のソフトを使っています。

井出氏■仮想化によって、ハードウェア、OS、アプリケーションが分離するので、システム構築の自由度が高まるのはどの企業にとっても大きなメリットですよね。サービスとインフラを切り離して設計できるので、SOAの基盤などにも適しています。

 同じ仮想化の技術を提供する企業のなかでも、ノベルさんは会社としての経験の蓄積が大きいですよね。これだけビジネスがグローバル化しているにも関わらず、米国企業の中には「世界=アメリカ」という感覚から抜けきれない企業がいまだに多いように感じます。その点ノベルさんは、Linuxに取り組んでいるせいかバランス感覚がいい。Linux文化はヨーロッパに深く根付いていて、SUSE Linuxもドイツ発のOSです。また、日本をはじめアジア圏でも大きなサポート力を発揮しています。これから世界の企業と競争していこうとしている日本企業にとって、いいパートナーとして活躍するのではないかと期待しています。

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