- 2025/08/30 掲載
会計士もエンジニアも終了…MITやBCGが考える「ヒトにしかできない」5つのこと(2/2)
BCG「AIと協働する人材」に必須の具体的スキル4つ
では、AI時代を生き抜くには具体的にどのようなスキルセットが求められるのだろうか。BCGの最新調査が示す現実は示唆的だ。AI活用で成功する企業の従業員は、単にツールを使うだけでなく、ワークフロー全体を再設計する能力を持つという。これは技術的スキルだけでなく、AIとの協働を前提とした新たな能力体系を意味している。
第一に必要なのは「AIマネジメント力」だ。これはAIの出力を盲信せず、その品質を評価・検証・改善する能力を指す。トムソン・ロイターの調査では、会計事務所スタッフの52%がすでにChatGPTなどのAIツールを個人的に業務で活用しているが、その多くがAIの「ハルシネーション」や誤情報のリスクに直面している。
MITの研究が指摘するように、AIは小規模データセットからの推論や、トレーニングデータを超えた推論が苦手だ。2つ以上の実行可能な解決策がある問題や、共有経験に基づく判断もAIには困難となる。こうした傾向を踏まえ、各AIシステムに最適化されたアプローチを構築する管理能力が求められている。
次に重要なのが「分析設計力」である。複雑な問題をAIが処理可能な個別タスクに分解し、適切な順序で実行させる能力だ。BCGの調査によれば、AIツールを最も効果的に活用している企業では、従業員が既存のワークフローをゼロから見直し、AI活用を前提とした業務プロセスに再構築している。これは単なる自動化ではない。人間とAIの最適な役割分担を設計する、高度な戦略的思考が求められる。
さらにAIでは代替困難な「人間固有の能力」の強化も不可欠だ。MITの研究チームは、感情的知性、創造的洞察、倫理的判断を特に重視する。データが示唆する結果と異なる選択をする「主観的信念」に基づく意思決定は、人間特有の能力だ。
研究者らは、「歴史を変えた重要な決定は、データが示す現状維持ではなく、『正しいことをすべき』という信念に基づいて行われてきた」と指摘。女性参政権運動や公民権運動を例に挙げている。
最後に、業界特有の文脈理解とAI活用戦略の立案能力が競争優位の源泉となる。会計分野では、AIが税務リサーチや申告書作成を担う一方、複雑な税務アドバイザリーや戦略的助言への需要が高まっている。
BCGの調査では、5時間以上のAI研修を受け、対面でのトレーニングやコーチングを受けた従業員のAI定期利用率が大幅に向上したと報告されている。しかし適切な研修を受けた従業員は全体の1/3にとどまっているのが現状だ。
「AI時代サバイバル」のための個人・組織の実践戦略
AIと共存する未来は、選択肢ではなく必然と言えるかもしれない。では、個人と組織はどう動くべきか。まずは現実を直視することから始まる。世界経済フォーラムの予測によれば、2030年までに9200万の職が失われる一方、1億7000万の新たな職が生まれるという。この巨大な転換期を乗り切るには、具体的な行動計画が不可欠となる。
第一歩は「AI代替可能性診断」の実施だろう。自身の業務を細分化し、各タスクのAI代替リスクを評価する。定型的なデータ処理、文書作成、パターン認識が中心の業務は高リスク。一方、MITが提唱する「EPOCH」能力(共感、物理的存在感、倫理的判断、創造性、ビジョン)が必要な業務は相対的に安全圏にある。ただし安心は禁物だ。AIの進化速度を考えれば、現在「安全」とされる領域も数年後には脅威にさらされる可能性があることには留意すべきだ。
次に重要なのが、AIツール習熟とヒューマンスキル強化の「並行学習戦略」だ。マッキンゼーの調査では、従業員の94%がすでに生成AIツールに何らかの親しみを持っているが、実際に日常業務の30%以上でAIを活用している従業員は13%にとどまる。この「認知と実践のギャップ」を埋めることが急務となる。具体的には、週5時間以上のAI研修と対面でのコーチングを組み合わせることで、定期利用率が大幅に向上することが実証されている。
組織レベルでは、社内AI導入プロジェクトへの積極参画が「適応力証明」の最良の方法となる。BCGの調査では、AI活用に成功している企業の従業員は、単にツールを使うだけでなく、ワークフロー全体の再設計に関与していることが判明。トムソン・ロイターの調査でも、AIスキルを持つ人材を積極採用する会計事務所が1/3を超えていることが明らかになった。AI適応力はすでに採用市場での差別化要因となっている。
「AIネイティブ人材」への自己変革は、もはや待ったなしだ。マッキンゼーのレポートは警鐘を鳴らす。企業の92%が今後3年間でAI投資を増やす計画だが、自社のAI展開を「成熟段階」と評価する経営者はわずか1%。この現実は、AI活用能力を持つ人材の希少性と、その価値の高さを物語っている。
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