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  • 2018/03/27

人手不足がさらに悪化 いよいよ「物価上昇」か

日本経済はすでに慢性的な人手不足に陥っているが、さらに状況が悪化するサインがあちこちに出ている。企業は人手不足によるコスト増を価格に転嫁するのか決断を迫られそうだ。

経済評論家 加谷珪一

経済評論家 加谷珪一

加谷珪一(かや・けいいち) 経済評論家 1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に「新富裕層の研究-日本経済を変える新たな仕組み」(祥伝社新書)、「ポスト・アベノミクス時代の新しいお金の増やし方」(ビジネス社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「教養として身につけたい戦争と経済の本質」(総合法令出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)などがある。

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とにかく人が足りない日本、いよいよ製品やサービスへの価格転嫁が始まるか?
(©torsakarin - Fotolia)

1月の失業率は24年ぶりの低水準

 総務省が3月2日に発表した1月の完全失業率(季節調値)は、関係者にちょっとした衝撃を与えた。昨年12月の数字を0.3ポイントも下回り、2.4%まで下落したからである。これは約25年ぶりという低水準である。

 日本の失業率は、金融恐慌も囁かれた2003年には5%を超える水準まで上昇していたが、その後の好景気で3%台後半まで下がった。リーマンショックによって再び5%を超えたが、その後は、現在まで一環して低下が続いている(図1)。

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図1■完全失業率の推移
(出典:総務省)

 国内の労働市場では、求人があっても職種や年齢などで双方の条件が合致しない、いわゆる雇用のミスマッチが存在すると言われる。2.4%というのはあくまで表面上の数値ということになるが、それでも完全雇用に近い状況であることに変わりはなく、感覚的にはバブル時代を彷彿とさせる。

 だが好景気による人手不足だったバブル期と比較すると、状況はまるで異なる。

 2016年に世界景気が底入れし、拡大基調を強めていることから、一部の業界では空前の好景気を謳歌している。旺盛な需要が続く半導体業界などはその典型だろう。

 だが、多くの企業にとって、好景気で人が採用できないという嬉しい悲鳴にはなっていないはずだ。一連の人手不足は、好景気ではなく、労働市場に供給される労働者の絶対数が少ないことが最大の原因である。

M字カーブがあっという間に解消された理由

 労働市場に人がいないことは、女性の年齢別就業率のグラフに観察される、いわゆる「M字カーブ」の状況からも見て取れる。

 日本は先進諸外国と比較して、子育て支援の環境が整っておらず、多くの女性が出産をきっかけに職場を離れている。女性の年齢別の就業率をグラフにすると、子育ての時期と重なる25歳から35歳の部分で顕著な数字の低下が観察される。40代になるとパートなど、非正規労働者として再び働き始める人が多いことから、就業率は再び上昇するので、グラフの形は30代の部分を中心にくぼんだ形(つまりM字型)になる。

 これを俗にM字カーブと呼んでおり、先進国では日本特有の問題とされてきた。このため、政府もM字カーブの解消を政策目標として掲げており、保育施設の拡充といった施策が試みられてきた。

 一連の施策が十分に実施されたとは言い難いが、M字カーブは別の理由によって急速に解消が進んでいる。それは極端な人手不足と労働者の実質賃金の低下である。

 総務省の労働力調査によると2017年における、女性(30~34歳)の労働力人口は264万人となり、全人口に占める割合も75.2%と過去最高を記録した。これは他の年齢とほぼ同水準であり、長年の課題だったM字カーブはあっと言う間に解消されてしまった(図2)。

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図2■労働力人口比率=労働力率(15歳以上人口に占める労働力人口(就業者+完全失業者)の割合)
(出典:総務省)

 一方、労働者の実質賃金は低下傾向が続いており、家計の経済状況は苦しくなっている。子育ての環境が整ったというよりは、経済的事情から仕事に復帰したと考えた方が自然だろう。

【次ページ】M字カーブの解消は、物価上昇がスタートするきっかけとなる?

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