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  • 2020/06/02 掲載

コロナ後の事業継続管理(BCM)、リモートワークのあり方は? ガートナー松本氏が解説

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミック。国内では緊急事態宣言が解除されたが、世界的には今なお増え続けており、第2波、第3波の到来を予測する声もある。将来的な見通しがいまだ不透明な部分も多い中で、企業が取るべき対応策の“解”は、いまだ存在しないのが実情だ。そして今後の事業復旧、さらにその先、いわゆるニュー・ノーマルへの対応法とは──。ガートナー リサーチ&アドバイザリ部門 バイスプレジデント,アドバイザリの松本良之氏が新型コロナ対応の危機管理プログラムと実施のポイントを解説する。
※本記事は2020年3月に配信されたガートナー Webinar「事業継続管理:パンデミックに備える」の講演内容をもとに再構成したものです。

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図1:パンデミック対策プログラムのプロセス(詳細は後述)
(出典:ガートナー)

初期対応の長期化に起因する新型コロナ対応の難しさ

 1月に中国・武漢から始まった新型コロナウイルス(COVID-19)の感染爆発。日本や欧米、ロシア、南米などへも被害が拡大したことで、WHOは3月、「世界的なパンデミック状態にある」ことを宣言した。こうした状況下での事業継続で鍵となるのがBCP(事業継続計画)である。

 国内では東日本大震災を教訓に、すでに多くの企業がBCPを策定済みだ。ただし、ガートナー リサーチ&アドバイザリ部門 バイスプレジデント,アドバイザリの松本良之氏は、「今回の新型コロナ対応には、地震や原発事故とは異なる難しさがあります」と指摘する。

「BCPでは一般的に、初期対応、復旧対応、復元というフェーズを辿ります。対して新型コロナ対応の場合、被害の“第2波”“第3波”による初期/復旧対応の長期化と、3密を避ける社会の行動変容に対応したビジネス刷新の必要性から、対応の難度がそれだけ増すと判断されます」(松本氏)

 ガートナーは今年3月、この特殊性を織り込んだ新たな危機管理プログラムを策定。そこで柱となる取り組みが、対策チームが影響をモニタリングすることでの「即時対応」、経営層や現場のリーダーによる、現在進行中の計画の再検討を通じた「優先順位付け」、計画をできる限り中断させないための「回避」である(図2)。

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図2:COVID-19(新型コロナウイルス)への対応
(出典:ガートナー)

 ガートナーによれば、この3つの活動は一連のプロセスによって推進されるという。内容を端的に説明すると前出の図1のようになる。

対策チーム主導で情報収集から判断までを“回す”

 最初は従来からのBCPと同様の、対策チームの組織を通じた「対策フレームワークの確立」である。ここでのポイントが、社内の感染者の発生を想定し、産業医や人事部門のメンバーを「環境・労働安全衛生」担当として対策チームに新たに組み込んだことだ。そのうえで、対策チームを社長直下に配置し、情報集約と命令伝達のハブとして機能させることで、BCPの対策フレームワークをパンデミック終了まで“回し続ける”のだ。

 収集すべき情報は、業務に関する社内外のあらゆるリスクや業務の現状など極めて広範だ。そこで、対策チームがモニタリングの仕組みを整備しつつ、リスク回避に向けた行動計画を策定し、即時対応に向けた「状況監視と深刻度の判断」につなげる。

「未知のリスクに対しては、誤った情報が錯綜(さくそう)しがちなため、情報の取捨選択が大切です。新型コロナの被害情報であれば、国やWHO、公的な医療機関などの情報を最優先に用いるべきです」(松本氏)

 以後は、主に優先順位付けと回避のための取り組みとなる。まずは、「財務状況の見極めと対応策の実施」だ。主に、売上や生産の減少、予想外の費用、為替の影響などを織り込んで収益予想を見直し、各種の判断材料とする。同時に、現預金などをモニターしつつ、必要に応じて株主や金融機関、政府に支援を仰ぎ、運転資金を確保する。新型コロナに端を発する国内アパレルメーカーの倒産劇からも、その重要性は容易に理解できるだろう。

 一方で、企業活動で人は不可欠であるため、「職場衛生と個人衛生の強化」も推し進める。具体的な方策の立案時にあたっては、WHOの新型コロナに対する保護対策や、厚生労働省の各種指針が参考になるという。

リモートワークのルール作りでは“人に優しく”

 社員が働く環境を維持するべく、リモートワークの採用を前提に「人事規定の見直し」も行う。その際には「社員の安全を最優先に、現場の戸惑いや不安に対して、柔軟かつ誠実に応えること」(松本氏)が大切だという。

「国籍によっては、新型コロナに大きな恐怖を感じ、仕事が手につかなくなる社員もいます。また、新型コロナに残念ながら感染するケースもあるでしょう。そこで、環境・労働安全衛生担当の下、リモートワークの運用ルールだけでなく、現状確認から休暇、復帰、バックアップまでの社員のケアについても人事規定で定めるべきなのです」(松本氏)

 併せて、非常時には業務の重要性を踏まえた人材の再配置が発生しやすい点を踏まえ、事業や地域ごとに各業務の重要性やリスクを棚卸し、交代要員の確保に向けたトレーニングも実施しておく。

 先に述べた通り、非常時にはデマや噂など“ノイズ”が錯綜(さくそう)するのが常だ。自社を守るために、それらから自社の社員を防ぎ、風評被害を回避するための「パンデミック時の広報プログラムの確立」にも取り組む。そのために。社内と社外の双方に対する広報プログラムを危機管理ワークフローへ組み込み、社員への伝達ルートを確保する(図3)。併せて、SNSなどに自社に関する投稿がないかを監視し、見つけた場合は慎重に管理する。

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図3:正確な情報を社内外に公報すべく、危機管理用の広報プログラムを事前にワークフローに組み込む
(出典:ガートナー)

「状況が不透明な時には、どうメッセージを伝えるかが大切です。選択を誤ればいたずらに不安をあおり、無用な誤解を招きかねません。結果、モチベーションの維持も困難になります。そうしたリスクを避けるために、メッセージのテンプレートを事前に作成するのも1つの手。社内での情報共有の促進には、関連情報のリンクを用意したパンデミックのポータルを立ち上げることも有効です」(松本氏)

 パンデミック発生後は、「事業運営への影響の評価」を経て、復旧活動に取り組むことになる。このフェーズに向け対策チームは、「楽観」「中庸」「悲観」の各観点から終息後のシナリオを練り続けておくことになる。

 復旧活動での柱の1つのが、傷ついたグローバル・サプライチェーンの回復/強化であり、ガートナーでは作業を次のように段階的に進めることを推奨している。

【次ページ】復旧後のリモートワークの在り方とは

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