• 会員限定
  • 2022/06/24 掲載

中堅・中小企業「自動化」の極意、なぜ富士通やNTTデータ、大塚商会は高評価なのか?

連載:中堅・中小企業市場の解体新書

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
記事をお気に入りリストに登録することができます。
昨今、デジタル化に取り組む中堅・中小企業も増えてきた。こうした企業が業務アプリケーションに求めるポイントとして「在宅勤務対応」に次いで重視しているのが「自動化」への対応だ。自動化といえば、RPAによるペーパレス化などが注目を集めているが、さらにその取り組みは進化している。今回は「自動化」に関連する中堅・中小企業の最新動向、ならびに富士通やNTTデータ、大塚商会などへの具体的なユーザー企業による評価を元に、注目すべき変化をひも解いていこう。

ノークリサーチ 岩上由高

ノークリサーチ 岩上由高

ノークリサーチ シニアアナリスト 博士(工学)
早稲田大学大学院理工学研究科数理科学専攻卒業後、ジャストシステム、ソニーグローバルソリューションズ、ベンチャー企業などでIT製品及びビジネスの企画/開発/マネジメントに携わる。ノークリサーチでは多方面で培った経験を生かし、リサーチ/コンサル/執筆・講演など幅広い分野を担当。著書は「AdobeAIRの基本と実践」「クラウド大全(共著)」(日経BP刊)など。

画像
中堅・中小企業にとっても「自動化」が大きなテーマになっていることがわかる

在宅勤務対応が後押しした自動化への取り組み

 以下のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業1300社に対し、業務アプリケーションの導入/更新に関する全体的な方針を尋ねた結果である。

 グラフ中に赤帯で示したように「在宅勤務への対応が容易なアプリケーションを優先する」(※1)と「自動化によって業務効率を改善できるか?を重視する」(※2)の2項目が高い値を示している。この調査を実施した2021年6~7月はコロナ禍に伴う在宅勤務が続いていた時期でもあるため、※1が高い値となっていたと考えられる。

 在宅勤務を阻む大きな要因が請求書や領収書といった紙面を必要とする業務だ。オフィス出社を減らすためには、こうした紙面業務を効率化する必要がある。そこで導入が進んだのがRPAによる「自動化」だ。紙面をAI-OCRで読み取り、業務システムに入力する処理を自動化すれば、手作業による転記と比べて時間を大幅に短縮できる。つまり、※1が後押しする形で※2の自動化に対するニーズも高まってきたというわけだ。

単に紙をなくすことが「デジタル化」ではない

 2022年に入ってコロナ禍の影響が薄らぎつつある中、次に企業が取り組むべきはデジタル化による業務のさらなる効率化だ。前述の自動化によるペーパレス化も広義にはデジタル化の一環だが、ただ単に「紙をなくせば、業務が変わる」というわけではない。実は自動化によって企業が取り組むべき業務改善のポイントはペーパレス化を行ったその先にある。

 以下のグラフは中堅・中小企業に対して「RPA活用における課題」を尋ねた結果を「RPAを導入済み」の場合と「RPAを導入予定」の場合に分けて集計したものだ。

画像
RPA活用で難しいのは「どの業務に適用するか」の判断だ

 RPA導入で難しいのは「どの業務にRPAを適用するか?」の判断だ。上記のグラフにおいても「自動化できる業務内容がどれか判断できない」の値は「導入予定」が「導入済み」を上回っており、これから自動化に取り組もうとする企業にとっても課題となっていることが分かる。

 だが、最近では業務ごとや業種ごとのテンプレートが充実しているので、それらの活用が解決の糸口となるはずだ。また、これからRPAを導入する中堅・中小企業は一部の先進的な企業とは違って複雑な業務連携をするわけではない。実際、2番目の「データ連携はできるが、業務の連携ができない」の「導入予定」における値は「導入済み」より低くなっており、今後の大きな課題ではないことが確認できる。

 一方、3番目の「デジタル化した紙面データを十分活用できない」は「導入済み」と比べて「導入予定」の値が下がっておらず、今後も注意すべき課題であることが分かる。

 たとえば、紙面で送られた契約書を電子ファイルに自動変換したとしても、続く回覧/承認において「契約書の場合、誰を最初の承認者にすれば良いか分からない」、「契約相手の企業に関するデータをどのシステムから取得すれば良いか分からない」という状態に陥る可能性もある。

 さらに、「契約書の修正について議論したいが、電子ファイルが見つからず、Web会議に参加する役職者全員に送付/共有するのにも時間を要する」といった事態になれば、紙面を電子ファイルにした意味がなくなってしまう。

 この場合には、
  • 文書の種別(契約書、領収書など)によって、回覧/承認の経路を自動的に判断する
  • 文書内容などを元に、その処理に必要なデータを他システムから自動で取得してくる
  • Web会議を招集するのと同時に、参加者に対して共有したいファイルを自動で送信する
といった対応をすれば、業務の効率も格段に向上するはずだ。

 つまり、下図が示すように真の「デジタル化」とは、最初のペーパレス化段階に該当する「データ化」だけでなく、「データ処理」や「データ保存/共有」においても自動化による効率化を進めることを意味するわけだ。

画像
データ化、データ処理、データ保存/共有の3段階に分けて考える

【次ページ】主要ベンダー5社の「自動化」「売上改善」評価

関連タグ

関連コンテンツ

オンライン

ローコード/ノーコード開発最前線 2024

DXがビジネスの必須要件となった今、ビジネスのあらゆる領域でアプリ開発のニーズが高まっています。しかしながらエンジニアやリソース不足で思うように開発が進まず、サービスのリリースや機能改善が滞っているケースも少なくありません。こうした状況を放置していると社内のDXの停滞を招くだけでなく、企業全体の競争力低下や収益低下にもつながりかねない状況です。このような中で注目を集めているのが「ローコード/ノーコード開発」です。「ローコード/ノーコード開発」を導入することで、アプリ開発の高速化を実現できるだけでなく、エンジニアのいないスモールオフィスや業務部門においてもアプリ・サービス開発が進められるようになります。顧客や業務部門の声を直接アプリやサービスに反映できるローコード/ノーコードはDXの起爆剤となりうる可能性を秘めています。とはいえローコード/ノーコードの開発が開発の柔軟性や提供したい機能を必ずしも満たしているとは限らず、その選定と採用には事前の情報収集や実装のための体制づくりが重要となってきます。本セミナーではDXを加速する「ノーコード/ローコード開発」導入にあたっての課題やノウハウを事例を交えて解説いたします。

あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます