• 2023/01/24 掲載

共同声明見直し、慣例化に懸念=「不要な思惑生む」―白川前日銀総裁

時事通信社

photo
  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。


政府・日銀が2013年に取りまとめた共同声明を巡り、白川方明前日銀総裁に行ったインタビューでの主なやりとりは次の通り。

―政府・日銀の共同声明が作成された背景は。

低成長の原因は物価下落(デフレ)にあり、日銀の金融政策が慎重過ぎるとの批判が強まる中、12年末の総選挙で故安倍晋三氏が率いる自民党が大胆な金融緩和と(上昇率)2%の物価目標導入を公約に掲げ圧勝したことだ。多くの国民が、大胆な政策も試してみる価値があるという気分に傾き、中央銀行として国民の声を全く無視することはできなかった。一方で、公約のような異例な政策を採れば、経済の持続的成長を損なう危険性が高いと判断していたことから、そのバランスをいかにとるか腐心した。

―共同声明に2%の物価目標が明記された。

2%という数字を掲げても、機械的に追求しなくて済むよう柔軟性を確保することが最大の課題で、それに全精力をつぎ込んだ。従って、(硬直的な金融政策を強いられる)政府との「政策協定」ではなく、「政策連携」とした。達成期限について、政府は「2年程度」を主張したが、明らかに不可能であり、結局「できるだけ早期」に落ち着いた。金融の不均衡などのリスク要因の点検も書き込み、柔軟性は確保した。

―物価目標の2%という水準は妥当か。

物価の安定というイメージを伝える上では意味があるが、水準自体には確固とした理論的な基礎はない。日本経済は今後の人口減少を考慮すれば、長い目でみて成長率が下がっていくことは、ほぼ確実だ。日本が目標とすべき物価上昇率は(2%の)欧米などに比べてたぶん低いだろうが、いずれにせよ絶対視は危険だ。

―共同声明の見直し論が一部で浮上している。

見直しには慎重さが必要だ。数カ月程度で結論を得られるような簡単な話ではない。金融政策や物価目標の在り方について、議論が熟すのを待った方がいい。総裁交代のたびに見直しを行うようになると、任期後半にかけて不要な思惑を生み出し、市場が不安定化する。悪しき慣例を残す。

―共同声明から10年、政府・日銀が目指す2%の物価目標の持続的な実現には至っていない。

(大規模緩和という)社会実験をやっても物価は上がらなかったし、潜在成長率は下がった。真の課題に社会のエネルギーが向かわなかったという意味で、10年間という時間を明らかに無駄に費やした。それでも、物価下落が低成長の原因ではないと理解が本当に行き渡ったか、やや疑問だ。

【時事通信社】 〔写真説明〕インタビューに答える白川方明前日銀総裁=19日、東京都渋谷区

評価する

いいね!でぜひ著者を応援してください

  • 0

会員になると、いいね!でマイページに保存できます。

共有する

  • 0

  • 0

  • 0

  • 0

  • 0

  • 0

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
関連タグ タグをフォローすると最新情報が表示されます
あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます