- 2023/02/15 掲載
トヨタ求心力の象徴=規制緩和でも指導力―豊田章一郎氏
発明王、豊田佐吉氏の直系の孫で、創業家「当主」のトヨタ自動車名誉会長、豊田章一郎氏が不帰の客となった。グループの求心力の象徴として、トヨタを世界的自動車メーカーに押し上げる土台を構築。規制緩和の推進をはじめ、経団連会長としても指導力を発揮した。
トヨタはもともと財界活動に興味を示さず、愛知県の三河の地にこもる「三河モンロー主義」とやゆされていた。その路線を転換する契機となったのは、日本からの輸出攻勢で1980年代に激化した日米自動車摩擦だ。
社長時代の84年に米ゼネラル・モーターズ(GM)と合弁工場を設立し、米国での現地生産化を進めた章一郎氏は、「かんばん方式」を海外に広げる世界戦略を展開する中、対外調整の必要性を痛感。その後、財界活動にも次第に力を注ぐようになる。
経団連会長を務めた94年5月からの4年間は、経済のグローバル化に対応するため、周囲をへきえきさせるほど規制緩和の重要性を繰り返し訴え、「ミスター規制緩和」と呼ばれた。前任の故平岩外四氏が決断した政治献金あっせん廃止を受け、企業経営者と政治家の相互理解を図る「企業人政治フォーラム」を設立するなど、政・財界の新たな関係づくりにも奔走した。
リーマン・ショック後の世界的不況で創業以来最大の危機に陥ったトヨタは2009年、章一郎氏の長男、章男氏に社長を「大政奉還」。章男氏は業績のV字回復を果たし、今年4月に社長を非創業家の佐藤恒治氏に託して会長に就く。章一郎氏は、トヨタの再生と、電動化時代への対応に挑む次世代の経営体制を見届け、旅立った。
【時事通信社】 〔写真説明〕ブレア英首相(右)と握手する経団連の豊田章一郎会長(当時)=1998年、東京・大手町の経団連会館 〔写真説明〕国内生産台数が1億台目となった新型クラウンを送り出すトヨタ自動車の豊田章一郎名誉会長(右)ら=1999年、愛知県豊田市
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