- 2023/03/15 掲載
非常食、アレルギーでも安心=東日本大震災きっかけに進化
未曽有の被害をもたらした東日本大震災は、非常食が進化するきっかけにもなった。アレルギーのある人や乳幼児の親、高齢者らが避難所生活で直面した苦悩を教訓に、食品メーカーは品ぞろえを強化。普段食べる商品も包装技術の改良で賞味期限が延び、備蓄しやすくなっている。
◇切実な声
「災害時に自分だけ違う食事がほしいとは言い出しにくい」。東日本大震災の直後、保存食メーカー尾西食品(東京)の社員は、食物アレルギーを持つ被災者の悩みを耳にした。同社の主力商品は、水を注ぐだけで食べられる「アルファ米」。切実な声を聞いてラインアップの拡充に乗り出した。
アルファ米は、創業者が第2次世界大戦中に兵士の携行食として開発し、1995年の阪神大震災で非常食として広まった。今では「五目ごはん」や米粉パンなど、国が定めるアレルギー物質28品目を使わない商品が全体の6割程度を占める。「カレーハウスCoCo壱番屋」が監修した人気商品のカレーライスセットもその一つだ。
◇食べたら買い足す
いつも食べている食品を買い置きし、食べるたびに買い足す備蓄法を「ローリングストック」と呼ぶ。防災上のメリットだけでなく、食品ロス削減にもつながると政府が推奨する。普及のカギを握るのは、品ぞろえの豊富さと賞味期限の長さだ。
アサヒグループ食品(東京)は、得意のフリーズドライ技術を使った総菜の幅を広げた。「やわらか牛肉の卵とじ」「5種具材のビーフシチュー」など18食とパックご飯のセット「ローリングストックBOX」を販売している。
キユーピーは温めなくても食べられるベビーフード「すまいるカップ」の賞味期限を12カ月から19カ月に延ばした。酸素が入り込まないよう容器を改良。飲み込みやすい介護食シリーズは、約6割を25カ月間保存できるようにした。
災害時の食に詳しい新潟大の藤村忍教授は、「広域で交通網が遮断された東日本大震災を契機に、アレルギーを持つ人や幼児、飲み込むのが困難な人の食事に配慮する必要性が理解されてきた」と話す。ローリングストックの有効性も訴え、「好みや体調に合った食品を備蓄することが重要だ」と指摘している。
【時事通信社】 〔写真説明〕アレルギー物質28品目を使わない尾西食品の非常食など=2日、東京都港区 〔写真説明〕備蓄しやすいように賞味期限を延ばしたキユーピーのベビーフードと介護食(同社提供)
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