• 2023/04/23 掲載

アングル:ドイツ車、中国市場で劣勢 EVが変えた業界勢力図

ロイター

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[上海/ベルリン 19日 ロイター] - ドイツの自動車メーカーが、18日に開幕した世界有数の自動車展示会「上海国際自動車ショー」に全精力を注いでいる。電気自動車(EV)時代に優位に立つには、中国で成功できるかが勝負の分かれ目になるとみているためだ。

今年の上海国際自動車ショーは、フォルクスワーゲン(VW)が取締役会メンバー全員に加えて従業員100人余りを現地入りさせるなどドイツ勢の存在感が際立ち、日本勢やフランス勢と対照的だ。コンサルティング会社オートモーティブ・フォーサイトのエール・ツァン氏は、ドイツメーカーが課題を深刻に受け止めている証左だと指摘する。

ドイツメーカーは乗用車販売の3分の1を中国に依存しており、ここで敗北した場合の打撃も最も大きい。

独BMWのオリバー・ツィプセ最高経営責任者(CEO)は記者会見で「われわれの車は機能の多くが中国に触発されたものだ」とし、中国市場は世界の潮流の先を行っていると述べた。

内燃機関の全盛時代、中国でドイツ車は技術的に世界の頂点にあるとみなされていた。ツィプセ氏の発言は、圧倒的なスピードでEV技術の開発を進めた中国メーカーにドイツメーカーが学ぶ時代へと、業界の勢力図が大きく変わったことを示している。

VWの経営陣は、他を圧倒する事業規模が低価格EVの販売競争を勝ち抜く上で追い風になるとみている。しかし、販売で負ければ生産能力の大きさは足かせになり得る。中国のEV大手、比亜迪(BYD)は今年に入り、中国でのシェアがVWブランドを上回っている。

ドイツメーカーは中国のEV市場でシェアが上昇しているが、まだまだ小さい。ロイターが中国汽車工業協会(CAAM)の販売統計をもとに計算したところ、中国EV市場におけるアウディ、BMW、VW、メルセデス・ベンツのドイツメーカー4社の合計シェアは2022年が4.8%で、20年の2.2%から拡大した。しかし、4ブランドのEV販売を全て合わせてもBYDの4分の1にすぎない。

ドイツ自動車工業会(VDA)のデータによると、ドイツメーカーの中国でのシェアは2015年の19.9%から19年に24.6%に上昇したが、その後19.1%に下がった。

コンサルタント会社カーニーのパートナー、トーマス・ルク氏は「中国市場はドイツメーカーにとって、もう以前のように安定してはいない」と言う。「より速くなるだけでは追いつけない。企業文化を変えるべきだ」

<思考の変革>

アナリストは、ドイツメーカーは新型EVを内燃機関車の電動版として販売する傾向があり、まだEV化を第1に考えるという意識改革ができていないようだと指摘する。

ツァン氏は「EVを内燃機関車の延長線上ではなく、新世代の製品として捉えることが重要だ」と話す。「上海自動車ショーでこの誤解が解けることを期待している」と語る。

中国の自動車メーカー、広州汽車集団(GAC)の馮興亜社長は「海外ブランドが自らの考え方に固執すれば、徐々に消えゆくだろう」と述べた。

ドイツメーカーは中国での販売てこ入れの一環として、中国人のEVブロガーやマーケティングの専門家などに声を掛けていると、実際に接触を受けたブロガーの1人が明らかにした。

中国ブランドは欧州進出のために新たな販売戦略を採っており、アナリストは欧州で既に地歩を築いているブランドがデジタル時代に対応するために、こうした動きから学ぶべきだとしている。

上海蔚来汽車(NIO)、吉利汽車とボルボ傘下のLynkはコミュニティースペースやカフェ、バーを設置している。NIOによると、こうした取り組みは口コミの拡散を通じて販売につながる。

また、多くのメーカーが直接販売も導入しつつある。BMWやメルセデス・ベンツなどドイツメーカーもこの数カ月、直接販売を行う意向を示した。

しかし、消息筋によると、中国ブランドは欧州で積極的な戦略に打って出る前に、まず国内市場の足固めに注力している。欧州ではアジアのバッテリーメーカーが既に確固たる地位を築いている。

ある消息筋によると、中国のEVブランドは価格を引き下げることができるにもかかわらず、中国メーカーによる市場支配を懸念する欧州の政策当局者を動揺させないため、今のところ価格を高く設定しているという。

BYDは今週、航続距離300キロを超えるEV「シーガル」を発売。最低価格はわずか1万1000ドルと、欧州の多くのエントリークラスの内燃機関車よりも安い。BYDは今年後半に新たな新型EV「シール」と「ドルフィン」を欧州市場に投入する予定だ。

ルク氏によると、中国メーカーは欧州で慎重に事を進めている。

一方、中国市場における戦いは熾烈を極めている。

オートモーティブ・インサイトのツァン氏は「以前は『絶望的』という言葉を使うことに慎重だった。しかし今は、少なくとも中国では、外国ブランドの時代は着実に終焉を迎えつつあると確信している」と話した。

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