- 2023/04/23 掲載
アングル:中国個人マネー、宝石・貴金属に 金融不安など引き金
「株式投資には詳しくないし、持っている投資信託が収支トントンになったら解約するつもりだ。それまでの間と思って宝石を買い続けている」とジューさん。探しているのは、いずれ価格上昇が見込めそうな珍しい形の高級ルビーだ。そうした人はジューさんだけではない。
18日の公式統計によると、中国では今年3月、宝石と貴金属の消費が前年比で37.4%増え、第1・四半期では13.6%の増加となった。
同期の中国経済の成長率は予想を上回り、小売売上高も予想の7.4%を超えて10.6%増加。これを押し上げた品目の筆頭が、宝石と貴金属だ。
ただ、貴金属人気は、国内消費を通じて経済を回復させようとする中国当局の取り組みがうまく行っていない可能性を示す心配な兆候でもある。中国は昨年末、新型コロナウイルス封じ込めのための厳しい制限措置を数年ぶりに解除した。
MUFG銀行(中国)の首席金融アナリスト、マルコ・サン氏は「高額消費(の堅調ぶり)には少し驚かされたが、経済全体の回復が鈍いという状況に変わりはない」と言う。
宝石と金の人気は、米シリコン・バレー銀行の破綻やクレディ・スイスの救済劇といった世界的な銀行危機により、投資家の信頼感が揺らいだ後に高まった。
チャイナ・マーケット・リサーチ・グループのマネジングディレクター、ベン・キャベンダー氏は「消費者が貴金属に関心を寄せているのは、安全資産およびインフレヘッジになり得るとの考えからだ。多くの消費者は中国で低インフレが続くとは予想していない」と語った。
中国の家計ではリスクに備えるため、貯蓄も増やしている。家計貯蓄は昨年、17兆8000億元増と過去最大の伸びを示したが、今年第1・四半期には、さらに9兆9000億元増えた。2021年の1年間の伸びに匹敵する。
ナンジン・リスクハント・インベストメント・マネジメントの調査ディレクター、パン・シーチュン氏は「経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)、リスク回避、国内消費の回復、これら全てが宝石と貴金属への投資需要を駆り立てている」と述べた。
(Winni Zhou記者、 Tom Westbrook記者)
PR
PR
PR