- 2023/04/29 掲載
米大手製薬がM&Aに前向き、研究開発費も軒並み増額
M&Aを推進する背景には主力薬の競争環境激化や近い将来の特許切れが控えていることがあり、これらに伴う減収を早急に穴埋めしてくれる可能性が期待されている。
例えばメルクは最近、自己免疫疾患治療薬を手がけるバイオ医薬品のプロメテウス・バイオサイエンシズを108億ドルで買収すると発表。ロバート・デービス最高経営責任者(CEO)は「われわれは短期と長期の双方で製品パイプラインの構築に注力しており、全ての分野にわたってディールを実行する」と強調した。
メルクはがん免疫療法「キイトルーダ」の特許が2028年に失効する。一方キイトルーダは現在販売額が世界トップクラスに膨らみ、第1・四半期売上高も58億ドルとアナリスト予想を超えた。
新型コロナウイルスのパンデミック期間に高値を付けていた米国の中小バイオ医薬品の株価が下落したことも、大手製薬側にとってM&Aの機会を広げる材料だ。こうした中小勢は、最有力の貸し手だったシリコンバレー銀行の破綻で資金調達環境が厳しくなった面もある。
アッヴィのある幹部は「バイオ医薬品企業にとって資金調達が困難になったのは確かだ。だから恐らく、彼らはわれわれのような(大手の)プレーヤーと以前よりいささか積極的につながりを持とうとするだろう」と述べた。
同社主力薬の1つ、関節リウマチ治療薬「ヒュミラ」は米国での第1・四半期売上高が26.1%減の29億5000万ドルにとどまった。アムジェンが投入した初のバイオシミラー医薬品との競争に直面したためで、アッヴィは第2・四半期にヒュミラの市場シェアが一段と低下すると予想している。
メルクと同様に当面は特許に守られたがん治療薬による収益確保が見込まれるアストラゼネカは、中国重視の姿勢を改めて打ち出した。パスカル・ソリオCEOによると、同社は過去数カ月で中国企業との間で3件のライセンス契約に調印したほか、より大型の案件を検討しているという。
ソリオ氏は「われわれは間違いなく買収に動ける。この点で制約は何もない」と言い切った。
第1・四半期は各社の研究開発費が軒並み上向いた。メルクは66%増、アストラゼネカは22%増、アムジェンは12%増、ギリアド・サイエンスは25%増などとなっている。
関連コンテンツ
PR
PR
PR