- 2023/05/10 掲載
焦点:金融環境安定へ足並み、景気リスク共有も G7新潟で成果文書
新潟市で行われるG7財務相・中銀総裁会議は、13日まで3日間の討議を予定。鈴木俊一財務相と植田和男日銀総裁が終了後、議長国としての記者会見に臨む。
今回の会議は、19日から21日にかけて広島で予定される首脳会合(サミット)の前哨戦との位置付けで、G7として経済分野での結束を再確認したい考え。議長国日本は、国際通貨基金(IMF)の春会合に併せて実施した4月会合に続き、共同声明を採択する構えで、神田真人財務官は9日、省内で記者団に「皆で合意できる少しでもより良いものを出したい」と抱負を述べた。
日本は、世界的な物価高や対ロシア金融制裁、低中所得国の債務問題を財務分野での「喫緊の課題」に掲げ、前ホスト国であるドイツから議長を引き継いだ。3月以降は米中堅銀を発端とする金融不安がくすぶり、4月会合では「適切な行動をとる用意がある」との声明を採択し、市場の鎮静化を図った。
G7各国は、金融不安が再燃すれば景気の先行きに影響が出かねず、引き続き警戒する立場を崩していない。今回会合で各国はグローバルな金融システムの安定と、強靭性を維持する重要性を改めて確認する見通しだ。
金融システムの安定に向けては、前身となる金融安定化フォーラム(FSF)を強化するかたちで金融安定理事会(FSB)を2009年に発足。主要25カ国・地域(22年末時点)の中央銀行や金融監督当局などを束ね、協議を重ねてきた。
G7に先立つ4月に米連邦準備理事会(FRB)が発表した中堅銀に対する規制や監督強化を促す調査報告書も念頭に、FSBに対し具体策の検討を指示することも視野に入れる。現代的なデジタル・バンクラン(取り付け)に対処する狙いがある。
もっとも、今のところ局面が変わったとまでは言えず、当局者の間では「十把ひとからげの規制強化には違和感がある」との声も強い。過度な規制強化に傾けば貸出余力の低下を招き、かえって景気を冷やす懸念がある。
前回4月のG7声明では、欧米を中心にインフレ率がなお高い現状に対し、中銀が「物価の安定を達成することに引き続き強くコミットしている」と、利上げを続ける立場を鮮明にした。根深い金融不安に加え、米政府の債務上限問題が市場に揺さぶりをかける中、インフレ抑止に向けたG7の結束を維持できるかも注目される。
初日となる11日の討議にはウクライナのマルチェンコ財務相もオンライン参加し、支援の継続を再確認する。対ロシア制裁に抜け穴がないかも話題とする方向だ。
12日には20カ国・地域(G20)議長国のインドに加え、韓国、シンガポール、インドネシア、ブラジル、コモロの閣僚も招く。コモロは、アフリカ55の国・地域が加盟するアフリカ連合(AU)議長国で、西側諸国と距離を置く国も含め、ロシアを非難する流れを強められるかが焦点となる。
債務危機の連鎖を食い止めるための方策や、脱炭素化に欠かせない製品の供給網強化に向けた新たな枠組みについて、期限を示して合意することも目指す。
(山口貴也、梶本哲史 編集:石田仁志)
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR